クマムシは地球上で最強の耐性を持つことが知られています。

絶対零度に近いマイナス272℃から水の沸点を上回る150℃までの温度を生き延び、極度の脱水状態であっても細胞質をガラス化することで細胞の形を保ちます。

また高線量の放射線にも耐えて、宇宙空間で10日間も生き延びたことがあります。

現在知られている地球のどの多細胞生命も、クマムシに匹敵する耐性を持ち合わせていません。

今回、そんな無敵生物クマムシの耐性の秘密に迫る研究が行われ、驚きの生態が明らかにされました。

目次

クマムシのDNAは特殊なタンパク質(Dsup)で保護されている
クマムシの特殊なタンパク質(Dsup)はDNAに「電気シールド」を提供する
なぜクマムシはそこまでの耐性を持つのか?

最強生物「クマムシ」は、DNAに電気シールドを張って放射線を遮断すると判明
(画像=クマムシは放射線に対してヒトの1000倍の耐性がある/Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

クマムシのDNAは特殊なタンパク質(Dsup)で保護されている

最強生物「クマムシ」は、DNAに電気シールドを張って放射線を遮断すると判明
(画像=脱水して仮死状態になるとクマムシは小さく縮こまる/Credit:Nature communications、『ナゾロジー』より引用)

極端な温度や放射線は、生物のDNAを破壊してしまいます。

ですがクマムシは脱水時に、上の図のような「tun」と呼ばれる仮死状態になることで、生き延びることが可能です。

tun状態では細胞質はガラス化して乾燥に強くなり、DNAはダメージサ抑制タンパク質(Dsup)と呼ばれる特殊なタンパク質でコーティングされることで高い耐性を持つようになります。

強靭すぎるクマムシ、ついに極限環境を生き抜くメカニズムが判明 – ナゾロジー

2016年に日本の研究者らは、このクマムシの耐性遺伝子(Dsup)をヒトの細胞に組み込むことで、ヒト細胞の放射線耐性を劇的に向上させることに成功しています。

しかしながら、Dsupがどのような仕組みでDNAを保護するのか、その詳細な分子メカニズムはまだわかっていませんでした。

そこでスペインの研究者たちは、DsupとDNAの相互作用をスーパーコンピューターを用いてシミュレートすることにしたとのこと。

結果、意外な事実が判明します。