まとめ

3つの方法で、タイトルの「わが国で新型コロナワクチン接種後の死亡例は漏れなく報告されているか」という課題について検証したが、いずれの結果も、わが国では実際の死亡件数の一部しか報告されていないことを示している。この結果は、国民の多くが抱いている感覚に一致するものである。

鈴村氏が提唱するように、各市町村が把握する人口動向調査とワクチン接種記録システム(VRS)に登録されたワクチン接種記録を連結すれば、図1のようにワクチン接種日と死亡との関係が一目瞭然である。その場合は、死亡例が漏れなく登録されているので、報告バイアスを考慮する必要がない。このようなデータを発表する自治体が今後現れるのを期待する。

改めて言うまでもないが、ワクチン接種後の死亡原因の全てが、ワクチンに起因する訳ではなく、偶発的死亡も多く含まれていると考えられる。これまでのところ、わが国においてはワクチン接種後の死亡報告1,725例のうち、ワクチン接種との因果関係が認められた例はない。

6月2日までに、予防接種後健康被害救済制度を使って178件の死亡一時金の申請があったが、疾病・障害認定審査会で審査されたのは7件に過ぎず、全て保留されている。過去に審査会では、予防接種と副反応との因果関係について完全な医学的証明を求めることは事実上不可能な場合があるので、特定の事実が特定の結果を予測し得る蓋然性を証明することによって足りることとするのもやむを得ないと判断している。

具体的には、因果関係の認定基準としては、疾患の病因とワクチン接種との関連が医学的に説明可能で、かつ、ワクチン接種と疾患発生とに時間的関連性が見られ、他に明確な原因がないことを挙げている。これまで、ワクチン接種後の死亡例として報告されていないなかにも、この基準を満たす症例は数多く含まれていると考えられ、救済制度の対象は膨大な数になるかもしれない。

文・小島 勢二/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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