2. 超過死亡
わが国は昨年来、戦後最大と言われる超過死亡を経験し、昨年の4月から今年の2月までの予測死亡数を上回る死者は72,000人に達している。
その要因として、これまで主に議論されてきたのは、
- 新型コロナウイルス感染の流行、
- 流行にともなう医療の逼迫、
- 2020年にみられた過小死亡への反動、
- コロナワクチン関連死
の4点である。
超過死亡の見られた時期は、コロナ流行の第4波・第5波、第6波と一致しており、さらに高齢者ワクチン接種の開始時期とも一致しているので、両者の複合要因と考えられることを先に投稿した論考で指摘した。実際、今年の1〜4月の愛知県における超過死亡数とコロナ感染死亡数、65歳以上の高齢者に対するワクチン接種回数との相関係数は、それぞれ、0.95、0.99と強い正の相関を示した。
この期間のコロナ感染死亡数は15,000人で、国立感染症研究所は、新型コロナウイルス感染症以外の原因による超過死亡が見られたことを報告している。超過死亡数の72,000人からコロナ感染死亡数の15,000人を引いた57,000人は不思議と上記で算出したワクチン関連死亡数の52,000人と近似している。
3. 海外との比較
海外における比較対象としては、人種的にも近く、同じ島国である台湾を選んだ。台湾のコロナ対策は国際的にも評価が高い。台湾のワクチン接種は、2021年の3月から始まり、使用製剤はモデルナ(2,130万回)、ビオンテック(1,764万回)、アストラゼネカ(1,529万回)のほか、台湾国産の高端ワクチン(285万回)製剤を使用している。
ビオンテックはファイザーと同じmRNA製剤である。高端ワクチン製剤は最近日本でも薬事承認されたノババックス製剤と同じ組み換えタンパク製剤である。
台湾では、2022年6月の時点で総計5,700万回接種されており、2回目接種率は82.8%,追加接種率は69.6%である。6月の時点でわが国の総接種回数は2億8,400万回であるが、日本の総人口(1億2,544万人)は台湾の人口(2,326万人)の5.4倍であることから、日本の2回接種率は80.8%、追加接種率は61.2%で、両国間の接種率は大きくは違わない。
表1には、台湾における新型コロナワクチン接種後の死亡報告を示す。
2021年の3月22日から2022年6月21日までの期間に1,501件のワクチン接種後死亡例が報告されている。病理解剖の結果が得られている308件を含む担当医の診断をもとに分類した死亡原因の内訳は、心筋梗塞などの心疾患が510件で最も多く、敗血症などの感染が235件、呼吸器疾患の195件が続く。ワクチン接種と死亡との因果関係についての記述は見つけられなかった。
台湾のワクチン接種100万回あたりの死亡報告は26.7件で、日本の6.1件と比較して4.4倍である。この差は、実際の死亡件数の差よりも、報告頻度の差を反映していると考えられる。ちなみに、台湾におけるワクチン接種後の死亡報告の件数は、コロナ感染による死亡数(5,651人)の26.6%にあたるが、日本について同様の計算をすると5.6%で両国間には大きな開きがある。