日本人が投資に消極的である理由(2):終身雇用制度
また、終身雇用制度が中心であった日本では、そもそも投資をする必要がなかったので、投資の知識が普及しなかったという見方もできます。
終身雇用制度では、年齢が上がれば昇給していき、退職時には退職金が支払われるのが一般的です。年齢とともに収入が増え、退職金や年金で老後の資金がまかなえるとすれば、たしかにわざわざ投資をする必要はありません。
一方米国では、あらかじめ業務内容が決められたポジションに応じて、スキルがある人を雇用する「ジョブ型雇用」が一般的です。給与も業務内容の評価に応じて支払われる仕組みで、日本のように年齢が上がれば自動的に昇給するというわけではなく、退職金もありません。
そこで、企業に頼らず自分の力で投資をして収入を上げたり、老後の資金を確保したりする必要があったわけです。
要するに、雇用が安定していて株価が低迷していた日本では、投資のリスクより貯金の安全性が優先され、日本に比べれば雇用が不安定で株価が上昇していた米国では、投資のリスクよりリターンの方が優先されてきたということです。
しかしご存知のとおり、バブル崩壊後の日本経済は停滞しており、右肩上がりの経済成長を前提とした終身雇用を維持することが難しくなってきています。
つまり、日本人も米国人のように、老後資金を自分で確保しなければならない時代になってきたということです。
貯金は本当に安全なのか?
「老後資金が必要ならばなおさら、リスクを負って投資するより、コツコツ貯金していこう」と考える人も多いと思います。
しかし、そもそも貯金は本当に安全なのでしょうか?
残念ながら、貯金はインフレによって価値が下がっていくという問題を抱えているため、実は長期的な資産運用にはあまり向いていません。
私たちの祖父の時代は10円でアイスが買えたそうですが、今のアイスは100円以上しますので、物価は10倍以上になっています。大切に10円貯金していたとしても、今はアイスどころか、12円に値上がりしたうまい棒も買えません。
物価が10倍になると、1円の価値は1/10になるといった具合に、1円の価値はインフレによる物価上昇に反比例して下がっていきます。
実際はアイスだけで物価が上がったかどうか判断できませんので、消費者物価指数をモノサシとして物価の上下を判断します。
消費者物価指数のこれまでの推移を見てみると、バブル崩壊後の日本は緩やかなデフレ(物価が下がる)状態でした。
主要国(G7)でデフレに陥っていたのは日本だけで、世界的に見てもこれだけ長期のデフレが続いている国は珍しかったので、「日本だけデフレだ!」と話題になりました。しかし極端に物価が下がっていたわけではなく、他の国と比べると停滞していた程度です。
バブル以前は日本の物価は上がり続けていたわけで、今後もおそらく上がっていきます。
なぜなら、最近の原油価格高騰や円安による物価の高騰は別問題として、経済成長と物価の安定のために、日本銀行は2013年1月に、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定めているからです。
事実、それ以来少しずつ物価は上昇しています。
思惑通りには物価が上がっていないのもまた事実ですが、金融調節の役割を担っている日本銀行がインフレを目指している以上、長期的に見れば今後も物価が上がって、1円の価値は下がっていく可能性が高いでしょう。