植物というと、ただ生物に食べられる側と思いきや、食べる能力を持つアクティブなヤツ、食虫植物。そのあやしさから、SF映画やゲームでモンスターのモデルにもされてきました。

ちょっと不気味だけど、ユニークで人気ですよね。今回は、食虫植物とはどんな生き物なのかという特徴や種類、育て方など、いっそう身近に感じられるようになる話をします。

目次
どんな捕獲方法があるの?
食虫植物の進化の過程

どんな捕獲方法があるの?

食虫植物の捕獲方法でよく知られるのは、以下の3つです。

1:とじ込み式

あやしい…でも惹かれる。「食虫植物」の世界
(画像=ハエトリグサ / Credit: ofugutan / ハエトリグサ、『ナゾロジー』より引用)

食虫植物といえば、パクっと捕食するイメージがあるものの、食中植物では数は少数タイプ。

代表的なのは「ハエトリグサ」で、捕虫器(捕虫葉)は二枚貝のような形状。写真のとおり、内側に赤いトゲのような感覚毛が生えており、虫が2回触れると1/2秒で閉じます。

すると補虫器の縁のトゲが内に曲がり、虫は出られなくなります。誤作動を防ぐ仕組みに加えて、厳重な仕組みですね。虫は10日ほどで消化されてしまいます。

2:粘着式

あやしい…でも惹かれる。「食虫植物」の世界
(画像=アメリカナガバモウセンゴケ / Credit: ofugutan / アメリカナガバモウセンゴケ、『ナゾロジー』より引用)

粘液に絡め取られた虫が、動けなくなってしまいます。北半球の高山や山地に広く分布する「モウセンゴケ」の仲間に多いのがこのタイプ。

モウセンゴケの葉に生える毛は粘毛といい、甘い香りがする粘液が出ていて虫を誘います。虫がくっつくと葉が包み込むように曲がって、逃げられにくくするものもあるのだとか。

あやしい…でも惹かれる。「食虫植物」の世界
(画像=アメリカナカバモウセンゴケに虫が捕獲されたところの拡大 / Credit: ofugutan / 虫が捕獲されたところ、『ナゾロジー』より引用)

なお、モウセンゴケは「コケ」という名前ですが、コケが好む湿地に生息するだけで、種子植物です。

3:落とし穴式

あやしい…でも惹かれる。「食虫植物」の世界
(画像=ウツボカズラ / Credit: ofugutan / ウツボカズラ、『ナゾロジー』より引用)

東南アジアを中心に生息し、70種類以上もある「ウツボカズラ」の捕獲法です。葉っぱがツボ型になった捕虫器が特徴で、自ら動く仕組みはないですが、工夫が満載です。

捕虫器には蓋が付いており、裏がツルっとしています。そこにある蜜腺に惹かれた虫は、足を滑らせて捕虫器に落下。また、蓋は雨があたると、その裏で雨宿りしている虫が衝撃で落ちやすい形状になっています。さらに、捕虫器の口の周囲も滑りやすくツルツルです。

あやしい…でも惹かれる。「食虫植物」の世界
(画像=ウツボカズラのツボの内部 / Credit: ofugutan / 底が破れて水が抜けているが、虫が落ちている、『ナゾロジー』より引用)

捕虫袋の内側もツルツルで、返しトゲまでついているものも。落ちた虫ははいあがれません。そのうえ底には消化液入りの水分がたまっています。

「迷路罠式」と「吸引式」

あやしい…でも惹かれる。「食虫植物」の世界
(画像=ゲンセリア属 / Credit: Wikipedia / ゲンセリア属、『ナゾロジー』より引用)

このほか珍しいもので、「ゲンセリア属」独自の細い螺旋構造になっている部分に虫が入って出られなくなる「迷路罠式」や、後述するタヌキモの「吸引式」があります。

食虫植物の進化の過程

そもそも、なぜ食虫植物は、虫を食べるなんて進化をしたのでしょう?

食虫植物は植物が根から吸収している窒素やリンなどの栄養素を虫を「食べる」ことにより、取り入れることが可能です。これにより、栄養に乏しい場所でも生きることができます。

また、「一般の植物が根で用いる遺伝子と同じ機能を持った遺伝子をモウセンゴケは捕虫葉で発現していた」という早稲田大学の研究報告もあります。遺伝子の発現機構を変える低コストな方法で、葉に新規機能を獲得したのではと考察されています。