今回は、2018年7月に発売されたスズキ 4代目ジムニー(3BA-JB64W)の素顔に迫ります。納車まで1年以上待ちとも言われていたほど高い人気を誇った4代目ジムニー。さまざまな方面で絶賛されていますが、果たしてどんなクルマなのでしょうか。0.6L版の5MTと4ATに約1,000km乗って見えてきた、4代目ジムニーの姿を紹介していきましょう。
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スズキ 4代目ジムニーの身上はクロカン4WD
スズキ 4代目ジムニーは高い完成度を誇るが気になる部分もある
スズキ 4代目ジムニーの身上はクロカン4WD
発売から1ヶ月も満たない段階で、すでに納車まで1年以上かかるといわれていた4代目ジムニー。ジムニーシエラにいたっては、なんと5年待ち状態との情報が飛び込んできたほどの大ヒットを飛ばしました。
20年ぶりのフルモデルチェンジだったということもありますが、なによりデザインや中身がいいことからビッグヒットになったことは間違いありません。ネット媒体で報道されない日はまずなく、4代目ジムニーが社会現象にさえなっていました。
今回、幸運にも2台のジムニーに長く乗る機会を得ました。すでにこれまでも、テストコース・一般道・オフロードコースでジムニーを試乗してきましたが、やはり一般ユーザーと同じスタンスで乗ることで、見えてきたことがたくさんあります。今回は、4代目ジムニーを約1,000km乗って感じたことをお伝えしましょう。
誤解があるといけないので、まず最初にお伝えしますが、僕はジムニーというクルマが大好きです。先代の3代目ジムニー(JB234型)もここ数年、年間5,000km以上のドライブをしてきました。そして、メーカーテストコースで444代目に初めて乗った時は、それは感激したものです。
3代目ジムニーは20年で10型まで改良版を出したロングセラーモデルで、非常に熟成されたクルマになっていました。ですが、発売から20年も経過すれば、何度も仕様変更を行っても前時代的な性能やフィーリング、安全性を完全にアップグレードすることは不可能です。
なので、ゼロから開発し直した4代目ジムニーは、すべてが衝撃的でさえありました。1970年の初代登場以来、その変遷を知る人間にとって、444代目ジムニーのクオリティーは感動を感じるほどのものでした。
それゆえに世ではベタ褒めする意見が多かったのですが、クロスカントリー(オフロード)4WD、いわゆる「ヨンク」を経験したことのない人にとっては、必ずしも手放しの評価にならないのではないかと思うのです。
そもそもジムニーのようなクロスカントリー4WDには、“オフロードを走らなければならない”という大義名分があります。そのため、ラダーフレーム構造のボディーや3リンク式リジッドアクスルサスペンションといった、現代の自動車においてはクロカン4WDとトラック以外で見かけない構造を採用しています。
こうしたメカニズムは、長い耐用年数やオフロード走行の衝撃や岩などへのヒットでも耐える頑丈さを確保する一方で、重量が重くなりドライブフィールや燃費といった性能に大きな影響を与えているのです。
例えば同じスズキのアルトやハスラー、ワゴンRなどとは、明らかに乗り味や使い勝手が異なっていることを事前に知っておかなければ、「こんなはずではなかった」となってしまうのではないでしょうか。
スズキ 4代目ジムニーは高い完成度を誇るが気になる部分もある
今回、約1,000kmという距離を乗ってみて改めて思ったことは、ジムニーはオンロード性能とオフロード性能というふたつの別々な方向性の中で、非常に上手くバランスさせているということです。
互いの性能はトレードオフとまでは言いませんが、一方を立てれば一方を犠牲にしなければならない部分もあります。例えば、オフロード走行では路面追従性が重要になり、しなやかに動く脚が必要です。ところがオンロードをシャープに走るには、動きすぎる脚はその妨げになるわけです。
その点で4代目ジムニーは素晴らしい着地点を見つけているのですが、クロカン4WDに乗り慣れていない人には“ちょっと違うぞ”となってしまうかもしれません。ただし、4代目ジムニーではその違和感も非常に小さなものになったはずです。
今回の試乗でパワートレーンのフィーリングにおいて、日常的に乗るには気になる点がありました。例えば、4ATは市街の細街路を走っていると、2速と3速を頻繁に行き来するため、非常にせわしい印象を受けます。
オフロード走行を考えてのセッティングだとは思いますが、ジムニーはサブ トランスファー(副変速機)を持ち、4WD-Lがあるわけですから、2WDと4WD-Hのギア比はもっと上に振ってもいいのではないでしょうか。高速道路で料金ゲートを通過して最大加速をする時、5MTに比べると4ATは加速が鈍いです。
高速道路での100km/hの巡航運転では、エンジン回転数が4,000rpm弱になります(5MTでは約3,200rpm)。これはトールワゴンなど昨今の軽自動車と比較すると、かなり高めと言わざるを得ません。もっとも3代目ジムニーに比べれば遮音対策も含めて快適レベルなのですが、ハスラーあたりから乗り替えたら多少うるさいと思うかもしれません。
また、パートタイム式4WDの駆動系から出る独特のギア鳴りも、気になる人がいるでしょう。3代目ジムニーと比較すると、動力性能やATのアップグレードがあったために、高速道路は快適に走れるようになりました。
ですが、多少オーバースピードで追い越し車線を走りたい時、勾配のある区間を走る時などは、オーバードライブのOFFや2レンジへのシフトダウンをドライバーが積極的に行わないと、キックダウンだけではクルマの流れに付いていくことはできないシーンが随分とありました。
また、体重80kg台の男性二人が、勾配約19%の登りの山道を走った際には、2速からまったくギアが動かず、しばらく40〜50km/hで走るハメになったのには驚かされました。ちなみにこの時、5MTは軽々と同じ道を登って行ってしまいましたが。
一方、5MTでも不満がないわけではありません。曲がりくねった山道、勾配のある未舗装林道では、やはり2速と3速でのシフトチェンジが忙しくなります。ジムニーは3代目でも5MTの2速と3速のギア比が離れ気味で、4代目でもその部分が踏襲されてしまいました。
そのため、登りの山道は3速で走っているとトルクが足りなくなり、2速にシフトダウンするとすぐに回転数が頭打ちになってしまうというジレンマを感じることになります。
未舗装路であれば、4WD-Lにシフトすることでギア比を近づけることができるのですが、乾燥した舗装路ではタイトコーナーブレーキング現象の危険性があるため、それもできません。