他の野党との「連立」を追求せざるを得ない共産党の最大の弱点

本書では、日本共産党は、単独では政権を取れず、政権に近づくためには必ず他の野党との「連合政権」ないし「連立政権」への参加が不可欠であることを示唆している。

私見によれば、ここに日本共産党の最大の弱点がある。共産党は、政権に近づくためには他の野党との「連立」を追求せざるを得ないのである。しかし、共産党は、これまで、他の野党に対し、1970年の「民主連合政府」提唱、2015年の「国民連合政府」提唱、2020年の「野党連合政権」提唱などを続けてきたが、ことごとく実現せずに失敗している。

共産党の「共産主義イデオロギー」と「非武装中立」への固執

失敗の最大の原因は、他の野党及び国民からも旧ソ連共産党・中国共産党と同様とみられる党規約2条の「共産主義イデオロギー(マルクス・レーニン主義)」に対する固執と、安保条約廃棄、自衛隊違憲解消という、外交一辺倒で「抑止力(反撃能力)」を完全に否定した安全保障政策に存在する。中北氏によれば共産党の安全保障政策は、旧日本社会党と同じ「非武装中立」である(本書304頁)。

まず、安全保障政策について、共産党は、軍事対軍事の対応はエスカレートし、戦争を誘発する危険性があると主張し、防衛力の強化に強く反対する。しかし、相手国との軍事バランスが大きく崩れ、「抑止力(反撃能力)」が低下することこそ「力の空白」が生じ侵略を誘発し極めて危険であることは自明である注2)。

今回のロシアによるウクライナ侵略がこれを証明している。世界に米国を軍事侵略する国が皆無なのは、米国が核を含む強大な「抑止力(反撃能力)」を保有しているからに他ならない。

次に、日本共産党が党規約2条に定める「マルクス・レーニン主義(科学的社会主義)」の核心は、レーニンによれば、「暴力革命とプロレタリアート独裁であり、暴力のあるところに、自由も民主主義も存在しない」注3)。プロレタリアート独裁とは、レーニンによれば、資本家に対する労働者階級の権力であり、どんな法律にも拘束されない権力である注4)。その実態は共産党一党独裁である。これは「法の支配」と明らかに矛盾する。

さらに、「暴力革命」に関連して、日本共産党は現在も「敵の出方論」注5)を明確には放棄していない。これは、敵の出方次第では暴力革命を行うということであり、「議会制民主主義」と明らかに矛盾する。