キャラクターが見えないのも現代においては新鮮

予算の都合だったのだとは思うが、当時思い切って英数字しか表示させない選択をしたのも英断だったと言えるだろう。バーコードバトラーIIには対戦のほかにストーリーモードも用意されているがこの場合でも表示は英数字のみ。キャラクターはなんと取説に2色刷りされているだけという今だったら絶対に通らなそうな企画構成になっている。しかし子供の想像力にはそれが刺さった。当時を思い返すと、説明書に書いてあっただけとは思えないくらい鮮明にどの敵とどう戦ったかを覚えている。無理してキャラクターを動かしたりせずとも、子供は想像力でいくらでも補って楽しむ能力を持っているのだ。

30年前に一世を風靡した「バーコードバトラーII」が2022年になっても色褪せない理由
(画像=取説でストーリーや敵キャラの見た目を解説し補うという斬新さ、『BCN+R』より引用)

そして30年経った今なお面白いと感じるのにも、英数字しか表示されないという要素が働いている。多くのゲームで強さの他にキャラクターデザインや対戦でどう使えるかなど複合的要素を理解しないといけないのに対して、戦闘力がいくつかというのはシンプルでわかりやすく、現代ではかえって新鮮だ。「最近買ったあのお菓子って戦闘力いくつなんだろう...?」と昔を思い出して本体を買い直してしまった筆者の行動も、バーコードを戦闘力に変えて対戦するというコンセプトの良さを証明しているのではないだろうか。

終息の原因は「ブランド毀損」、ヒットしたジャンルの難しさ

褒め称えているわりに長続きしなかったじゃないかという声もあるだろう。ヒットが終息してしまった理由はいくつかあるが、最も大きな原因はブランド価値の維持ができなかったところにある。遊戯王であれば対戦ルール運用やコラボの可否、ポケモンであればゲームの難易度やアニメ視聴者層の調整など、長続きしているトイビジネスはブランディングを非常にうまく展開している。

新シリーズ投入など変化は必須なものの、陳腐化が起こらないように要所要所に制限をかけることはとても重要だ。この舵取りの上手さは双方ともアパレルのハイブランドに負けないほどで、事実ポケモン関連商品は今でも人気が衰えていないし、遊戯王カードに至っては投資対象になるほどである。

バーコードバトラーではこの部分がうまくいかず、一気にブームが去ってしまったように思える。例えば、人気の渦中でドッジ弾平など当時人気だったキャラクターとコラボしてしまい、オリジナルのキャラクターカードの価値を落としてしまった。またバーコードでなくとも模様ならなんでもスキャンできる「スーパーバーコードウォーズ」(名刺すら対戦に使えたのでバーコードウォーズという商品名には苦言を呈したいが…)という競合機を制御しきれなかったのは致命的で、「売っているバーコードを読み取る」という意義が無くなってしまったのだ。

【画像07】筐体やシステムは同じなのにドラゴンボールやガンダムのシリーズがリリースされていた「スーパーバーコードウォーズ」はまさにカオス状態

バーコードウォーズはスキャンのスピードや手法でランダムに戦闘力が変わるのを売りにしていたので、キャラクターはなんでもよくなっていた。対策としてバーコードバトラーが公式のキャラクター強化や特定のバーコードを手に入れたときにだけもらえるキャラクタースリーブなどを導入していれば対抗できていたかもしれない。コンセプトがここまですぐれていても衰退してしまったことを考えると、ヒット後ブランド化するのがいかに難しいかが窺い知れるだろう。