こんにちは。2021年7月にフリーライターから法人成りを経験した、新米経営者の夏野かおるです。

この連載もめでたく10回目となりました。そして会社も、立ち上げから1年弱が経ちました。

当初はどうなることかと不安でいっぱいだったのですが、おかげさまで仕事は増え続けており、売上も安定しています。これまでにはなかったタイプのご相談をいただく機会も増え、「会社です!」と名乗るメリットを強く感じています。

経営者の“洗礼”!? 法人化してわかった、採用の難しさ
(画像=▲大変なこともあるけれど、自分で決めたことだから頑張れます、『Workship MAGAZINE』より引用)

ただ、そんな状況のなかで新たに浮上した課題もあります。それが体制強化。要するに、「人を増やしたい!」ってことです。

今のところは私がキリキリ働くことで業務を回しているのですが……どこまで行っても、1日は24時間。いよいよもって、気合いで解決できる範囲を超えてきたんですね。

「とりあえず動こう」と思い立ち、クローズドなコミュニティで募ったり、SNSで悲鳴を上げてみたり、カジュアル面談ツールを利用してみたりしたのですが、残念なことにトラブルが続出。

くわしくは後述しますが、まさに経営者の“洗礼”とも言える出来事がたくさん起こってしまいました。

というわけで今回は、会社の規模にかかわらず課題になりがちな「採用」の話をします。「こんな応募は嬉しい!」「やめてね……」という話もしますので、よければ参考にしてください。

目次
「採用って、本当に難しい」と感じた3つのポイント
就業形態別のメリット・デメリット

「採用って、本当に難しい」と感じた3つのポイント

前置きはこのくらいにして、実際にどのような苦労をしているのか、(書ける範囲で)具体的な話をしようと思います。

悩み1. スキルマッチする人がいない

「そもそも候補者がいない」という問題ですね。

私の会社では、おもに「テック系のBtoB領域」を強みとしてさまざまな業務を受託しています。

が、これって実はけっこうニッチなようでして……。たとえばライターさんを採用するにしても、テック系に強い人はなかなかいません。NFTとか、AIとか、そういう話をなんとなくでも理解しており、かつ、記事を書ける人の母数はそこまで多くないんです(でも、ニーズはすごく高いんです!)。

経営者の“洗礼”!? 法人化してわかった、採用の難しさ
(画像=▲テック系に詳しいライターさんがいたらぜひご連絡ください。(こんなふうに、隙あらば呼び掛けております)、『Workship MAGAZINE』より引用)

なおかつBtoBとなると、業界理解やビジネス感覚がそこそこ求められます。「〇〇領域の最大手は△△で、××が競合。主要なビジネスモデルは□□で……」みたいな。

じゃあ、こういう人が弊社に応募してくれるのか?というと、「いやあ……(苦笑)」って断られるのがオチです。

考えてみれば納得できますよね。需要も、予算もある領域なんだから。自分の能力を活かすのであれば、得体の知れないライターが1人でやってる会社よりも大手企業のほうがいいに決まってます。

まとめると、そもそも母数が少ない上に、弊社に魅力がないため応募者が集まらない。……なんか、書いててつらくなってきましたが、こういう大きな課題があります。

悩み2. 失礼な応募が予想以上に多い

「応募者が集まらない」と書きましたが、ときには応募メッセージをいただくこともあります。こんな小さな会社にご興味をお持ちいただき、ありがたい限りです。

ただ、ですね。中には「お、おう」というメッセージもあります。たとえば、こんな内容です。(※多少ぼかしていますが、本当にこういう感じです)

こんにちわ。
仕事が欲しくてメールしました。
よろしくお願いします

応募してきてくれたのは大変嬉しいんですが、すみません。まず、お名前を教えてください。

できれば、実績も教えてくれたらもっと嬉しい。その上で、やりたい仕事を具体的に書いていただけたらなおよかったです。

これは極端な例ですが、他にもいろいろと失礼な応募はありました。「この要求を呑むなら雇わせてやってもいいぜ!」的なメッセージとか。その自己肯定感、どうやったら養えるんだよ……。

経営者の“洗礼”!? 法人化してわかった、採用の難しさ
(画像=▲「フルリモートは絶対(ぜってぇ)だ! 気に入った仕事しかやりたくねえ! でも報酬はスゲ〜欲しいぜ! 夜露死苦ぅ!」みたいなメッセージがマジで送られてきます、『Workship MAGAZINE』より引用)

こういうメッセージに悩んでいるのは、別の会社さん(割と大きな会社です)も同じだそうで……。

「初めからやりたいことだけアピールされても、こちらが採用するメリットはないよね」

「できることを教えていただいて、ある程度コミットした上で『最終的にはこういう仕事をしたい』と共有してもらえるのは嬉しい。でも、初手でこちらに要求ばかりしてくる人はちょっとなあ……」

とのこと。大きな会社でもこの通りなので、規模を問わず、あらゆる会社が失礼な応募文に悩んでいるのでしょう。

仕事の応募はよく、恋愛にたとえられます。

この比喩にのっとると、上で紹介したメッセージって、こういうことになります。

よう!
付き合おうぜ!
連絡待ってるぜ!

こんにちは。
私はいずれ世界一周に付き合ってくれる人を探しています。
私と付き合うのであれば、あなたには最低7ヶ国語を話してもらいます。
よろしくお願いします。

どうでしょう。あまりよろしくない応募文なことが分かるでしょうか。恋愛ならまだ、「おもしれー奴」と思われる余地があるかもしれませんけども……。

仕事は「労働力とお金の交換」です。でも、大前提として、人と人との関係から生まれる行為なわけです。その証拠に、一人でしゃかりきになって働いたって、そこにニーズがなければ1円の価値も発生しません。

だからこそ、メッセージを受け取った人がどう思うか?を一度考えてみて欲しいのです。

もし、「気持ちはあるけど、メッセージの書き方がわからん」と思ったなら、一度調べましょう。いろいろな情報はあれど、少なくとも3行メールを推進している記事はないと思いますよ。

悩み3. 採用しても、稼働時間が安定しない

ハードルを乗り越えて採用しても、まだまだ気は抜けません。採用は、その方が定着してやっと「成功した」と言えるからです。

とくにフリーランスは、条件がマッチしなければ「今回で終了」とお互いに言い出しやすい就業体系。初月はよくとも、次月に「やっぱりやめます」と言われるリスクは大いにあります。

経営者の“洗礼”!? 法人化してわかった、採用の難しさ
(画像=▲頼りにしていた方が抜けると、業務はもちろん、心にもぽっかりと穴が空いてしまいます。でもそれがフリーランスなので……、『Workship MAGAZINE』より引用)

こればっかりはどちらが悪いとかではなく、単にマッチしなかっただけなので、ある程度は仕方がありません。どれだけ丁寧に面談をしても、しばらくご一緒する中で「ちょっと違うな」と思われることはあるでしょうからね。

その上で、この悩みに関しては就業形態によってそれぞれのメリット・デメリットがあるように思いますので、さらに掘り下げてみましょう。

就業形態別のメリット・デメリット

共同創業者(コミット◎。ただし、まず出会えない)

まさに運命共同体、初代プリキュアの片割れみたいな存在です(今のプリキュアは5人くらいいるけど)。

経営者の“洗礼”!? 法人化してわかった、採用の難しさ
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

いろいろな経営者に話を聞いた結果、「この人は!」と思える相棒が見つかるならそれに越したことはないようです。

なにせ、会社をやっていると、本当に誰にも話せないような悩みが増えてくるので……。等しく経営にコミットしているメンバーがいると、やっぱり心強いですね。

ただ、そうした人と出会えるかどうかは、通常の採用の1億倍くらい難しいのではと思います。

ただでさえ「大人になってからの友達づくりは難しい」なんて言われるのに、一緒に会社を作って、ビャンビャンに経営してこうぜ!って思える人と都合よく出会えるかどうか?おそらく、砂漠からビーズを探すようなもんじゃないでしょうか。

だから、もしも相棒に出会えた人は、一生大事にしてください。私は今のところひとりぼっちです。

正社員(コミット○、プレッシャーも高め)

共同創業者よりもコミットの度合いは下がるものの、フリーランスよりは断然濃密にコミットしてくれる存在です。

お仕事を依頼するにあたっても、契約が案件ベースではないので、(よほどおかしな業務内容でなければ)選り好みをせず、一定時間引き受けてくれる良さがあります。

ただ、その一方で、会社側もいろいろな義務を負うことになります。社会保険料や必要経費を負担する必要があるため、どうしてもコストはかかりますし、「社員の人生を背負っている」プレッシャーもあります。

「あかんかったら廃業しちゃお!」みたいな気楽さが失われるため、機動力が下がり、より堅実なビジネスをする必要が出てきます。

それでも最近は、応募があるかどうかは別として、1人くらい正社員さんを採用した方がいいのかなあ、なんて考え始めました。理由は、「フリーランス」「副業人材」の項でくわしく書きます。

専業フリーランス(小回り◎。しかしリスクも)

フリーランスは案件ベースで依頼でき、ハイスキルな人材をスポットで採用できるため、小さな会社にとってありがたい存在です。

とくに弊社はフルリモートなので、全国各地、居住地を問わず優秀な人材に声をかけられるメリットがあります。実際に現在お願いしている方々は、「こ、こんなすごい人がウチに!?」みたいな方ばかりで、フリーランスでなければ採用しづらかったのではと考えています。

ただし、人材の層が広い=玉石混交であることも意味します。どんな人でも名乗った瞬間「フリーランス」になれるため、「嘘やろ!?」みたいなトラブルが一番起こりやすいのもフリーランス人材なのです。

経営者の“洗礼”!? 法人化してわかった、採用の難しさ
(画像=▲フリーランスには、良くも悪くも「マジ!?」って人材がいます、『Workship MAGAZINE』より引用)

なおかつ、お互いに断る自由があるため、「来月はこの人にお願いしよう」と当て込んでいたところ、「すみません、他社から2倍の金額で声がかかりましたので今月で終了で」みたいなことも起こります。こっちはその人の社会保険料を払っていないのだから、「キミ、困るよ!」なんて追いすがる権利はありません。

お互いに自由な分、アテにもできない。それこそがフリーランスであり、悩ましいところです。

副業人材(ビジネスマナー○。でもコミットは△)

最近は副業推進の流れがあり、実際に弊社にも副業人材から応募をいただきました。こうした方は本業でビジネスマナーを身につけていることが多いため、ファンキーでモンキーなトラブルに発展するリスクは低めです。

ただ、副業である以上、会社へのコミット率はどうしても低くなります。また、フリーランスと同じで、「来月からはこれをお願いしよう」と考えていても、「あ、すみません、本業のほうが繁忙期に入ってしまったので来月はムリです」と言われる可能性はあります。

これを防ぐには、「1ヶ月単位で依頼できる、納期がタイトでない仕事」などを定常的にお願いしていくのがいいのですが……じゃあ、「なるはやで進めたい仕事」は誰がやるの?

そうです、私が必死こいてやるのです。あんまり楽にならんやん!

経営者の“洗礼”!? 法人化してわかった、採用の難しさ
(画像=▲急ぎでない仕事をご依頼し続けた結果、私の手元には急ぎの仕事ばかりが溜まる結果に。QOLが……、『Workship MAGAZINE』より引用)