3 日本での技術見通し

では日本についてはどうか。

今年11月11日に開催された「グリーンイノベーション戦略推進会議」において、経産省の研究機関であるRITEが資料を提示した。

そこでは、CO2ゼロを実現するための技術として、

  • CCUS。CO2を発電所や工場から回収し、地中に埋める。
  • 合成メタン。水素からメタンを合成して燃料として用いる。
  • 合成石油。水素から石油を合成して燃料として用いる。
  • 水素。石炭ではなく水素を用いて製鉄する。
  • DAC。大気中からCO2を回収し、地中に埋める。

などが並んでいて、何れも大規模に使われることが想定されている。

耳慣れない技術もあるが、それもそのはずで、上記のうち、世界のどこかで本格的な普及に至ったものは一つもない。何れもまだ、机上計算や実験室の中のものであり、せいぜいパイロットプラントが幾つかあるといったレベルだ。

4 コストは国家予算に匹敵する

では「仮に」上記の技術が全て利用可能になったとして、コストは幾らかかるのか。RITEが先だって2016年に行った試算がある。

それによると、日本の温室効果ガスを8割削減するには、エネルギー供給についても電力供給についても「かなり無理のある」技術構成が必要である。のみならず、上述のような新規技術の大規模な普及も必要となる。

その2050年におけるコストは年間43兆円から72兆円、と試算されている。コストに30兆円もの幅が出るのは、原子力の利用をするか否かによる。

残り2割を削減するための費用は発表されていない。だが単純に比例計算するとしても、8割から10割に削減率を上げると、43×1.25=54兆円ないし72×1.25=90兆円となる。

これはいまの国家予算が年間103兆円であるのに匹敵する規模だ。このような巨額を、温暖化対策だけの為に使うことなど、正当化できるはずがない。

2050年CO2ゼロのコストは国家予算に匹敵する
(画像=日本の国家予算、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)