資本性劣後ローンとは
地銀や政府系機関には、私たちにあまり知られていない融資がある。「資本性劣後ローン」もその一つだ。
この融資の特徴としては、
- 長期の元金返済据え置き
- 業績連動の金利(赤字のときは金利負担が低くなる)
- 償還順位がすべての債務に劣後するため、金融機関は融資金を自己資本とみなす
などが挙げられる。
この融資を受けるのに適しているのは、今後取り組む事業において大きく収益が向上する見込みがあるが、現在のままでは資金が不足しそうだ、という状況にある企業である。
一般的には日本政策公庫や商工中金などのHPにあるフォーマットに従って事業計画を提出することで審査を受けられるが、残念ながら承認の事例はまだまだ少ない。
しかし、もし自社の事業が拡大局面にあり、今後大きな資金需要が予想できるなら、資本制劣後ローンにチャレンジして一定期間の運転資金を資金調達しておくことができれば、事業の実現と収益化に集中できる。
借り入れたときは大きく思える返済金額も、据え置き期間中に事業収益が数倍になれば返済の難度は大幅に低減する。
足りなくなるのを見越して多めに借り入れるなど、一般サラリーマンから見たら博打じみた借金に思えるかもしれないが、経営者が資金繰りに奔走しているために事業がうまく回らなくなってしまう実例はとても多い。
経営者であれば財務への向き合い方として、事業に必要な資金を逐次投入するような愚は避けなければならない。
金融機関との友好関係を築く
金融機関とうまく付き合うための通常実務としては、できれば担当者から催促される前に、毎年の決算書の提出はもちろんのこと試算表も定期的に支店に持参して、融資担当や支店長との人間関係を深めておくことが肝要である。
自分の都合のいいときだけ金融機関にすり寄るその場しのぎではなく、貸し手・借り手の双方が納得ずくで計画的な資金調達を行うことで、会社の資金繰りは恒常的に安定し、その分経営者が売上拡大や人材育成など本来の経営実務に集中できる。
昭和の創業者にありがちだが、必要なときに必要なだけの融資を受けて、そうでないときには支店には挨拶にもいかない殿様商売では良好な関係は築けない。
それは決して融資のためのこざかしい友誼づくりなどではない。金融機関は様々な企業の経営財務を見続けてきており、私たち事業主がその知見から得るものはとても大きいのだ。
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玉木 潤一郎(経営者 株式会社SweetsInvestment 代表取締役)
建築、小売店、飲食業、介護施設、不動産など異業種で3社の代表取締役を兼任。一般社団法人起業家育成協会を発足し、若手経営者を対象に事業多角化研究会を主宰する。起業から収益化までの実践と、地方の中小企業の再生・事業多角化の実践をテーマに、地方自治体や各種団体からの依頼でセミナー・コンサルティングの実績多数。
編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2022年6月1日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。
文・シェアーズカフェ・オンライン/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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