融資は時期に左右される

一般に金融機関は、民間か政府系かを問わず2〜4年で人事異動を繰り返す。

これは融資を申し込む上で注意すべき重要な特性で、例えば3月末に本部の融資担当者に人事異動があれば、それまで進行していた融資の審査は一からやり直しになる。もし急ぎの運転資金だった場合には、1〜2ヶ月の遅延でも深刻な事態になりかねない。

計画的な資金調達にあたっては、人事異動のスケジュールを念頭において早め早めに手配していくことが好ましい。

また貸す側の事情だけでなく、借りる側の企業にも時期に注意が必要な場合がある。毎年の決算月がそれだ。

大きな投資案件であれば、好調な決算資料をもって申し込みしたいところだが、融資の検討中に自社が決算をまたいだりすると決算書の再提出を求められることがある。その決算が低調だったりした場合には、融資の判断に悪影響を及ぼすこともある。

ちなみに運転資金が最も借りやすいのは、自社にとって資金調達の必要がないときだ。逆に支店から「お付き合いでいくらか借りてくれないか」と持ち掛けてくるようなときである。

将来的に運転資金の需要が発生するのが見えているときには、金利の支払い期間が多くなったとしても、そういうときに好条件で融資を受けられれば金利の支払い総額は抑えられる場合もある。

様々な金融機関を試す

融資を受ける金融機関は、自社が零細企業だからと地元の信金や地銀だけに限定せず、都銀や他府県の地銀、政府系などのエリア内にある支店へと広げることで、資金調達の可能性は広がる。

新しい取引の金融機関からいきなり多額の融資が承認されることは少ないが、まずは取っ掛かりとして少額の運転資金を借り、それをきっちり返済する事で信用を重ねていけば、ここぞというときに大きな資金を受けられたりもする。

筆者の場合でも、静岡県の零細企業でありながら都銀や他県の地銀からも融資を受けることができている。地元金融機関では融資が受けられなかった知人の企業が、筆者の助言で交渉先を大幅に広げたところ、他県の第二地銀の最寄り支店から融資を受けられたケースもある。

また、大きな事業の場合には複数の金融機関がまとまって融資を行う協調融資の形態をとることがあるが、そういう場合にも新規の金融機関との取引を開始しやすく、この場合はいきなり多額の融資があり得る。

新規の金融機関にしてみればこれまで取引がなかった企業への融資を判断するにあたり、既に取引している複数の金融機関から融資承認が得られているというエビデンスは大きい。