挑戦的なメッセージの
背景にある自信の根拠
もう1つ、ファミリーマートで驚かされた施策が、挑戦的なメッセージ広告です。
新しいプライベートブランド商品シリーズ「ファミマル」の発売にあたっては、新聞広告で「負けていたのはイメージでした」と掲載。さらに同時期には、JR「渋谷」駅前に「そろそろ、No.1を入れ替えよう」という広告を大々的に打ちました。名前は挙げていないものの、これはコンビニ売上首位「セブン-イレブン」への挑戦状と言えます。
これは、よほど商品と商品パッケージに自信があったのでしょう。実際に手に取ってみると新パッケージは、シズル感があり、シンプルでわかりやすいものになっています。
コンビニは専門店と違い、従業員が商品を説明できる時間はほとんどありません。来店客の滞在時間は5分程度であり、瞬時にこの商品は何か、どんな味かを顧客に理解してもらう必要があります。「ファミマル」のパッケージは、そうしたコンビニに求められる機能性をしっかり備えています。
そのほか個人的には、店員さんが着用しているファミリーマートのデザインTシャツが好きです。何種類もデザインがあって、このお店はどんな柄か見るのが来店時の楽しみだったりします。
シンプルながらメッセージ性があり、字体やカラーリングも洗練されています。これは40周年プロジェクトの広告代理店である電通(東京都)の力もあってこそだと思います。
なぜ足立氏の施策は
人の心をとらえるか
ファミリーマートでもその手腕を発揮している足立氏。同氏のSNS投稿を見ると、自身が所属企業の商品のヘビーユーザーになっている印象をうけます。投稿内容は、遊び心、自社商品への愛情に溢れています。だからこそ、自社商品を多くの人に伝えようと、買い手の立場に立ったマーケットインの施策を数々生みだすことができるのでしょう。
これまでの足立光氏の経歴などから考えると、ファミリーマートでの在任は23年2月期が最終年になるのではと予想しています。この残された期間で、足立氏のような消費者にワクワクを与えるマーケティング施策を実行できる人材を育てられるかが、ファミリーマートの課題になるでしょう。
【略歴】
田矢信二(たや・しんじ)
近畿大学商経学部卒業。幼少期は実家の小さなおもちゃ屋で商売を学ぶ。その後、セブン-イレブン、ローソンを経て、コンサルタント会社でも勤務。コンビニの商品や売場全般に詳しく、お店に訪れ消費者目線で買い物して試食する毎日。本部社員として働いた現場経験を活かし、コンビニに関する講演・セミナーからテレビ・ラジオ番組などにも出演。コンビニをテーマにした記事への取材なども。アジア企業へのコンビニをテーマにした企業講演の依頼も多い。主な著書に『セブン-イレブンで働くとどうして「売れる人」になれるんですか? 』、『ローソン流アルバイトが「商売人」に育つ勉強会』(以上、トランスワールドジャパン)がある。
提供元・DCSオンライン
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