日本共産党綱領「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」の削除
したがって、日本などの先進資本主義諸国においては、上述の通り、名目賃金が年々上昇し、失業率も顕著に低下して、「失業」と「貧困」の問題が基本的に解決され、「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」という「共産主義の理想」がすでに実現している。
そのため、日本の前衛党である日本共産党の綱領においても、「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」(「1994年綱領」)という部分が削除され、共産主義の理想が、「真に平等で自由な人間関係からなる共同社会への本格的な展望」(「2004年綱領」)に変更されている。
労働争議(「階級闘争」)の激減 そして、今も労働者階級の間で、「失業」と「貧困」の問題が社会主義革命のための重要な経済的条件であるとすれば、上述の通り、労働者階級における「失業」と「貧困」という社会主義革命の条件がなくなり、「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」という「共産主義の理想」に対する魅力も関心も肝心の労働者階級の間で消失し、「失業」や「賃金」をめぐる労働者階級と資本家階級との「階級闘争」が顕著に減少し緩和した。
このことが社会主義革命を抑止し、資本主義が崩壊しない、したがって、社会主義に移行しない極めて重要な原因であることは明らかである。日本のみならず、先進資本主義諸国でも同じ傾向である。
ちなみに、独立行政法人労働政策研究・研修機構によれば、全国の「労働争議」(「ストライキ」)の件数は1974年のピーク1万1000件から、2019年にはわずかに数十件にまで激減しているのが実態である(厚労省「労働争議統計」参照)。労働争議件数は労働者階級の「失業」や「貧困」などの経済状態を反映したものである。
(次回:「なぜ資本主義は崩壊しないのか?その原因を究明する③」に続く)
文・加藤 成一
文・加藤 成一/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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