デパート不振が示す中間層の消滅
というところで、デパートの売上はというと、これはもう涙なしには見られないほど、極度の不振が続いています。
デパートの惨憺たる売上低下は、大型ショッピングモールという店舗形態が流行らなくなっているのと並んで、アメリカ社会から所得中間層が消滅しつつあることも大きく関係しています。行きつけのブランドショップがあるほど裕福ではないけれども、たまにはおしゃれなもの、センスのいいものを買いたいという程度の余裕はある世帯が、ほんとうにアメリカ中から消えつつあります。ほんの一握りの大金持ちと、あとはほとんどが貧しい人々という構図が、アメリカの世相をますます荒んだものにして、無差別大量銃撃殺人とか、左右両極に分断されがちな世論動向とか、街頭での乱闘騒ぎとかを生んでいるのではないでしょうか。
勤労者の週給は1970年代初頭の水準を回復していない
とにかく、アメリカのふつうの勤労者の賃金・給与は10年以上続いた金融市場の活況とは裏腹に、まだ米中国交回復、米ドルの金兌換停止、第1次オイルショックのあった1970年代初頭の水準よりまだ8%も低いのです。
それなのに、消費は「順調」に伸びつづけています。その結果、バイデン政権は1930年代の所得激減期以来一度も達成したことのなかった、消費支出がGDPの7割台に乗せるという「偉業」を成し遂げました。
もちろん、可処分所得だけでこの高い消費水準を維持できるわけはなく、借金で消費を膨らませているわけです。いつかはツケが回ってくるでしょうし、そうなったときアメリカ株にはこれまでのようなささやかな調整ではなく、大暴落と長期低迷が待っていると思います。
編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2022年5月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。
文・増田 悦佐/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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