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もっと遠くの天体との距離の調べ方
超新星爆発を使った距離の測定

もっと遠くの天体との距離の調べ方

同じ銀河系内の比較的近くの星ならばHR図を使って距離を知ることができます。しかし、銀河系の外にある別の銀河との距離は、この方法で測定することができません。

そのため、20世紀初頭では、新たに発見されたマゼラン星雲やアンドロメダ大星雲(現在は銀河)が、天の川銀河の中にあるのか、それとも銀河の外にある天体なのか、さっぱりわかりませんでした。

この問題を解決させたのは、アメリカの女性天文学者ヘンリエッタ・スワン・リービットです。

星までの距離の測り方って知っていますか?
(画像=アメリカの女性天文学者ヘンリエッタ・スワン・リービット。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

彼女は一風変わった経歴の持ち主です。現在では女性天文学者として伝えられているリービットですが、もともとはハーバード大学の天文台に時給30セントで雇われたパートタイマーでした。

これは現在の価値に直すと時給600円程度です。

天文台では毎日膨大な数の天体写真を撮影し分別しています。

現在はパソコンがあるので、そうした分類作業も比較的楽になっていますが、当時は写真乾板を手作業で管理していたので飛んでもなく大変な作業でした。

ハーバード天文台の男性職員たちはこの整理をかなりずさんに行っていて、怒った所長のピッカリングは「うちのメイドの方がずっとマシな仕事をする!」と彼らを解雇して、代わりに女性のパートタイマーを雇ったのです。

その中にいたのがリービットでした。

リービットは天文台で、セファイドと呼ばれる脈動変光星を探すカタログ作りの作業を行っていました。

変光星とは何百日もかけて明るさが変化する星のことです。

変光星が明るさを変える理由には、いくつか種類がありますが、代表的な脈動変光星は星内部の核融合反応と星の重力のバランスが取れなくなっているために、膨張収縮を繰り返して明るさを変化させています。

星までの距離の測り方って知っていますか?
(画像=ミラの変光星の光度曲線。 / credit:国立科学博物館Copyright (c) 1998-2008 National Museum of Nature and Science. All rights reserved.、『ナゾロジー』より引用)

変光星を探すには、毎日大量に撮影された天体写真の中から、明るさが徐々に変化するものを見つけなければなりません。これはかなり根気のいる大変な作業です。

しかし、毎日大量の天体写真と向き合っていたリービットたちパートタイマーは、いつの間にか現職の天文学者より変光星を見つけ出すのがうまくなっていました。

そしてあるときリービットは、変光星の変更周期が長い星ほど明るく輝いており、変光周期が一致していると星の明るさが同じであるという相関関係に気づいたのです。

つまり変光周期が同じ変光星は、絶対等級が同じだと分かったのです。

星までの距離の測り方って知っていますか?
(画像=変光星の変光周期と絶対等級の関係。 / Credit:国立科学博物館 Copyright (c) 1998-2008 National Museum of Nature and Science. All rights reserved.、『ナゾロジー』より引用)

これが分かれば、見かけの明るさをもとにして、天体との距離を推定することができます。

このリービットの発見によって、宇宙の天体との距離は一気に6500万光年まで測定可能になったのです。

超新星爆発を使った距離の測定

いきなりダイナミックな調査方法ですが、遠い宇宙を調べる場合、超新星爆発を利用した距離の測定方法も存在します。

超新星爆発は夜空の中でも非常に明るい現象です。突然新しい星が生まれてきたかのように見えることから、昔の人はこれを「超新星」と名付けました。

しかし、実際の超新星は、重い星が自重に耐えきれなくなって起こす爆発現象です。

超新星には発生プロセスによっていくつか種類があります。その中で宇宙の距離測定に利用されるのがIa型(いちえいがた)超新星です。

Ia型超新星とは、白色矮星が起こす特殊な超新星爆発です。

白色矮星とは、核融合の燃料を使い果たして死んだ星のことですが、これが近くに別の星を持つ連星だった場合、伴星の物質を奪い取って再び活性化することがあるのです。

星までの距離の測り方って知っていますか?
(画像=伴星から物質を奪い、再び活性化する白色矮星のイメージ。 / Credit:ESA/ATG medialab/C. Carreau、『ナゾロジー』より引用)

白色矮星は、星として維持できる質量の限界が決まっています。これをチャンドラセカール限界といい太陽の1.4倍以上の質量になることはありません。

そのため伴星から物質を奪い限界質量に達した白色矮星は、超新星爆発を起こすのです。

つまり「白色矮星は2度死ぬ」わけですね。

このIa型超新星の重要な点は、全てがほぼ同じ質量で発生するため、ピーク時の光度がどの天体でもほぼ一致していることです。

明るさがみんな一緒ということは、これまでの方法と同様に地球から見て明るさが異なるとき、それは純粋に距離の影響として比較できるのです。

超新星は銀河1個分に相当する明るさだと言われています。Ia型超新星は90億光年という遠方からでも確認できるため、非常に遠い宇宙を調べる際にも利用できるのです。