2日目:ぐるぐると変わる風の中、電波が圏外になる父島東側の「ドブ磯」へ

気象予報では南東の風、南西の風、北の風、北東の風と3日間で目まぐるしく変化する。2日目は西からの強い風を避けるために父島の港を出発したら島をグルッと東側に回った。

東側には魚影が濃いドロップオフの「ドブ磯」という有名なダイビングスポットがある。小笠原のダイビングショップやマリンダイビングでもよく紹介されている場所だ。

しかし、行ってはみたもののドブ磯がとても潜れる状況ではなかったので、風向きが変わってうねりがおさまるまで別のポイントを潜ることにし、ドブ磯の近くにある「テング根」というポイントへ。

とても見晴らしの良い地形の場所で、スコンと抜けた透視度の中、ゆるい流れに乗りながら気持ちよくダイビングができた。

日本国内24+3時間の船旅 小笠原諸島でドリフトダイビング13本勝負!
5種類の魚が混泳している(画像=『オーシャナ』より 引用)

小笠原では「根魚※1」という言葉をよく使う。

※1 名前の通り、水中に点在する岩場の「根」に住み着く魚。周囲が水深1000m以上の海域に囲まれている小笠原諸島は、魚たちが住む場所も制限されているので1ヶ所への依存度が高いと感じる。ヨスジフエダイ、アカヒメジ、ノコギリダイなどの南国系にテングダイなどの本州系が混ざっているのが小笠原の海の特徴。
日本国内24+3時間の船旅 小笠原諸島でドリフトダイビング13本勝負!
ヨスジフエダイの奥に群れに突っ込むダイバー(画像=『オーシャナ』より 引用)

連日雨予報だったが太陽が出てくれて、ボニンブルー※2に黄色い魚がよく映える。また、ここでは食事中のユウゼンの群れを見ることもできた。ユウゼンは「友禅染め」の模様が美しい日本固有種のチョウチョウウオ。個人的にも大好きな魚だ。

※2 かつて無人島だった小笠原諸島は「無人島(ブニンジマ)」と呼ばれ、その後定住した欧米系住民が「Bonin island」となまったことが由来にある。小笠原諸島は開拓期や戦後占領下に外国から移り住んだ人も多く、沖縄や伊豆諸島と違い、どこかハワイやミクロネシアの島々に似た雰囲気を感じる。
日本国内24+3時間の船旅 小笠原諸島でドリフトダイビング13本勝負!
ユウゼンの群れ(画像=『オーシャナ』より 引用)

父島の北側には「兄島」があり、さらにその北には「孫島」がある。

この日は、父島諸島最北の「孫島平根」も潜った。依然としてうねりが強く、潮の流れも早いので、船長・ガイド・ゲストダイバーのすべてにテクニックが求められる。

FISHEYEの大型ダイビングボート「Beast MasterⅢ」は、九州から小笠原諸島まで波高3m以上の中を自走してきたパワーと安定性を持つ、小笠原屈指の船だ。

聞けばこのポイントを潜るダイビングショップはほとんどないという。

ガイドのアグレッシブなポイント選択が身を結び、イソマグロ、ヒレナガカンパチ、そして日本では小笠原諸島にしか生息していないシロワニの姿を見ることができた。

日本国内24+3時間の船旅 小笠原諸島でドリフトダイビング13本勝負!
シロワニの歯(画像=『オーシャナ』より 引用)

群れだけではなく大物の魚も、南国系・本州系・ほぼ固有種と小笠原らしい多様性を感じることができた。