民主主義の敗北
急激な民主化に失敗して混乱したロシアは、強権的な国家に戻った。周辺域に置いてクリミア併合などの武力紛争を続け、欧米諸国ともぎくしゃくした関係を続けた。そしてついにウクライナでの戦争となり、関係の悪化は決定的になった。
中東も、欧米的な民主化には向かっていない。イスラムによる世界の統治を武力を厭わずに目指すジハード主義の勢力が台頭し、イランはイラク、シリア、レバノン、イエメンに勢力を伸ばしてサウジと小競り合いを続けている。その一方では、あまり民主的とはいえない国家体制が続いている。
下図はNGOであるV-DEMが発表した世界の民主主義の状況だ:
赤から青になるにしたがって民主主義の指数が高くなっている。これを見ると、民主主義の発達した国というのは世界の一部に過ぎないことが分かる。V-DEMによると世界人口の僅か14%しか民主主義を享受していない。
ユートピアは実現しなかった。
中国の台頭
そして、世界の民主主義にとって最大の脅威となっているのが、中国の台頭だ。
中国の経済力は世界に浸透している。下図は、2018年の各国の貿易相手国の米中比較だ。
3分の2の国(190カ国中128カ国)が、アメリカよりも中国と多く貿易している(赤からピンク)。のみならず、90カ国が中国とアメリカの2倍以上の貿易を行っている(濃い赤)。
サウジアラビアにとっても、UAEにとっても、すでに日本よりも中国の方が上得意の輸出先だ。
いざというときに、サウジとUAEは中国と日本のどちらを大事にするだろうか。