COP26では1.5℃目標をめぐって先進国と途上国が物別れに終わりましたが、全世界で毎年数兆ドルのコスト負担が必要になるという点では一致しました。ところがいまだに日本では「脱炭素が経済成長のバネになる」という民間団体が、首相に提言しました。脱炭素化は必要ですが、それで成長するというのは錯覚です。2021年1月4日の記事の再掲。
日本経済新聞の元旦の1面トップは「脱炭素の主役、世界競う 日米欧中動く8500兆円」でした。「カーボンゼロには21~50年に4地域だけでエネルギー、運輸、産業、建物に計8500兆円もの投資がいる」という、お正月らしく景気のいい話ですが、この記事はちょっと変です。
Q. カーボンゼロって何ですか?
二酸化炭素(CO2)は大気中に0.04%あり、人間が呼吸で排出するので、ゼロにはできません。だから「カーボンゼロ」という表現は不正確で、政府の出している目標はカーボンニュートラル、つまり排出する炭素と吸収される炭素を同じにして大気中のCO2濃度を増やさない「炭素中立」です。
Q. CO2を吸収させることはできるんですか?
自然な炭素循環でも人間の排出したCO2の半分以上は森林や海に吸収されるので、植林は役に立ちますが、それでは足りません。人間の排出するCO2を地中に埋めるCCS(CO2貯留)という技術もありますが、コストが非常に高く実用化できません。