■赤字額が膨らみ続ける2つの理由
モバイル事業の営業損失が膨らみ続けている理由は、主に2つある。
●基地局関連コストの負担
最も大きな要因は、基地局の整備などに多額の費用がかかっていることだ。しかも、楽天は基地局の整備について、当初立てていた計画を4年前倒しで進めたため、赤字額が一気に拡大した。 しかし、基地局の整備が終われば、設備の維持コストなどはかかるものの、現在のような巨額の営業損失を計上することはなくなるだろう。
●破格の格安プランの展開
楽天はモバイル事業では後発組なので、他社よりも魅力的なプランを打ち出す必要がある。そこで楽天は価格面での差別化を図り、月額2,980円という格安プランを打ち出した。 ところが、ドコモが楽天に対抗してさらなる格安プランを打ち出したため、楽天はこれに打ち勝つために「1GB以内なら料金を0円にする」という破格のプランを設けた。これが、業績に大きなマイナスインパクトを与えたと考えられる。
■三木谷氏がモバイル事業を続ける理由
このように赤字が膨らみ続けているモバイル事業だが、楽天の三木谷浩史会長兼社長はこれをある程度予想していたはずだ。多額の基地局設置コストや、ユーザー獲得に向けた価格競争などは、参入前に容易に予想できる。 それでも三木谷氏がモバイル事業に取り組むのは、他のサービスとのシナジーを見込んでのことだろう。 楽天の一部サービスでは、使用するサービスが増えるほどユーザーへのポイント付与率が高くなる仕組みが導入されている。そのため、あるサービスで獲得したユーザーを他のサービスに誘導しやすい。 もちろんモバイル事業単体での黒字化も目指しているはずだが、背景にはこうした狙いがあるわけだ。
■2022年12月期第2四半期以降は回復の見込み
2022年度第1四半期の決算説明会で、三木谷氏は月額0円のプランを終了し、2022年6月末(見込み)には楽天モバイルの全ユーザーが課金対象となることを発表した。
これにより、第2四半期以降は、増え続けていた営業損失が減少する見込みだ。ただし、この発表によるユーザー減少がどの程度まで影響するのか懸念点も残る。
まずは、次の決算発表におけるモバイル事業の営業損失額に注目したい。
文・MONEY TIMES編集部
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