掻けば掻くほど痒くなる原因が判明しました。
九州大学および岡山大学の研究によれば、繰り返し皮膚を引っ掻くことで生産される「かゆみを増す」タンパク質を発見した、とのこと。
掻けば掻くほど痒くなるという体験は多くの人々によって共有されていながら、これまで詳しい仕組みは不明でした。
研究成果を医学に応用できれば、人類を太古より苦しめていた「謎のかゆみ増幅サイクル」を遮断できるようになるかもしれません。
しかし、いったいどんな仕組みで、かゆみは増幅されていたのでしょうか?
研究の詳細は、2022年5月2日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。
目次
「掻けば掻くほど痒くなる」はマウスでも起きていた
皮膚を引っ掻くと「かゆみを増す」タンパク質が生産されていた
「かゆい‐引っ掻く‐かゆい」の悪循環を断ち切る薬は開発可能
「掻けば掻くほど痒くなる」はマウスでも起きていた
かゆみによって誘発される引っ掻き行動は、有毒物質やダニなどの害虫を皮膚から除去するために行われる、本能的な行動の1つです。
しかし皮膚病などのいくつかのケースでは、いくら皮膚を引っ掻いてもかゆみの原因が除去されず、皮膚が破れて炎症を起こし、むしろかゆみが増加することが知られています。
この「かゆみ‐引っ掻き傷‐かゆみ」のパターンは典型的な悪循環であり、かゆみを長引かせる大きな原因として人類を太古から苦しめてきました。
そこで今回、研究者たちはマウスを用いて「かゆみの増大」の背景にある仕組みを解明することにしました。
研究開始のキッカケとなったのは「マウスの爪のお手入れ」でした。
研究者たちは以前から、かゆみと神経の関係を調べていたのですが、爪を切りそろえられたマウスでは皮膚への刺激が減り、脊髄にある「かゆみ伝達神経」の活性が起こりにくくなっていることが判明したのです。
この発見はマウスにおいても「掻けば掻くほど痒くなる」現象が起きていることを示していました。
マウスの爪のお手入れからはじまった研究は、どんな進展をみせたのでしょうか?