「手を使わず、目と脳だけでコンピュータを操作する」というSFチックな技術が現実のものとなりました。

オーストラリア・メルボルン大学の神経内科医トーマス・オクスリー准教ら研究チームは、10月30日付けの科学誌『Journal of NeuroInterventional Surgery』に、頭で考えるだけでマウスクリックできる脳インプラント「Stentrode」の研究結果を発表しました。

彼らによると、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などで手が動かせなくなった患者がStentrodeを装着することで、目線と思考だけでパソコン操作できるようになったとのこと。

目次
首から血管を通して脳インプラントを移植する

首から血管を通して脳インプラントを移植する

“思考でパソコンを操作可能”にする脳インプラントが登場!
(画像=Stentrodeはマッチ棒サイズ / Credit:The University of Melbourne,『ナゾロジー』より 引用)

脳インプラント「Stentrode」は2010年以来、オクスリー氏らによって研究されてきました。

従来の脳インプラントは頭蓋骨の一部を切り取り、脳に電極を埋め込むという技術であり、脳組織の損傷というリスクを抱えていました。

“思考でパソコンを操作可能”にする脳インプラントが登場!
(画像=Stentrodeが脳領域で固定され、神経情報を読み取る / Credit:J Gregory,『ナゾロジー』より 引用)

対してこのStentrodeは、首に小さな穴をあけ、マッチ棒サイズのデバイスを移植するという手法。血管内に挿入されたデバイスは特定の脳領域で固定され、血管壁に張り付いた電極から神経情報を記録するのです。

2016年には羊の脳活動の記録に成功しており、現在ではインプラントによる双方向通信が可能とのこと。つまり、信号を脳に伝えることもできれば、脳信号を外部に送ることもできるのです。

オクスリー氏らは、身体麻痺した患者がロボットの手足を操作することを目指して、この技術を発展させてきました。