2020年のノーベル物理学賞は、ブラックホールの発見に貢献した3人の科学者に送られました。

ロジャー・ペンローズ博士は「一般相対性理論がブラックホール形成を導くことを数学的に証明した」功績を讃えられノーベル賞を受賞。

同時に受賞したラインハルト・ゲンツェル博士とアンドレア・ゲズ博士は、我々の属する天の川銀河の中心に超大質量ブラックホール「いて座A*(いてざえーすたー)」が存在することを発見した功績に対してノーベル賞が送られています。

そんな受賞者の1人ペンローズ博士はこの他にもいろいろと一般にも知名度の高い研究がある有名人ですが、その中にビッグバン以前の宇宙の痕跡を見つけたというものがあるんです。

ビッグバン以前の宇宙とは一体なんなのでしょう?

目次

ビッグバン以前の宇宙
宇宙が終焉を迎えても残るブラックホールの残骸
宇宙背景放射に残る前の宇宙の痕跡

ビッグバン以前の宇宙

ノーベル賞受賞者ペンローズ博士は「ビッグバン以前の宇宙の痕跡」も見つけていた
(画像=宇宙膨張の概略図。 / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

宇宙の歴史を辿っていくと、宇宙は非常に小さい領域で起きた巨大な爆発「ビッグバン」から始まったということがわかっていて、現在も宇宙はその時の衝撃によって膨張を続けています。

しかし、いずれその勢いが失われたとき宇宙はどうなるのでしょうか?

一部の科学者は膨張の勢いが止まった宇宙は、宇宙の中にある物質の重力によって再び一点に収縮していく「ビッグクランチ」が起きると考えています。

これはいわば宇宙の終焉と呼べるものです。

ところが、これで宇宙は終わらないという考えがあります。一点に収縮した宇宙は再びビッグバンを起こして膨張し、新しい宇宙が始まるというのです。

宇宙はビッグバンによる膨張とビッグクランチの収縮を延々と繰り返していて、私たちのこの宇宙もビッグバンがすべての始まりではなく、その以前にも同様に宇宙が存在していた可能性があるのです。

しかし、そんなことを実際に証明できるのでしょうか?

ロジャー・ペンローズ博士は、そのビッグバン以前の宇宙の痕跡を発見する研究を以前に発表しています。

その鍵となるのが、今回のノーベル賞物理学賞の主題にもなっているブラックホールなのです。