収益へのインパクト大、コスト増が再編の引き金に!?

 こうした業界再編の動きは、ますます加速しそうな兆しだ。

 なかでも再編の引き金となりそうなのが、流通小売業各社にとって深刻な課題となっている原価高騰、コスト上昇である。現在、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに原材料価格や輸送費に直結するガソリン代、電気代の価格が高騰しており、これが大幅なコスト増として各社にのしかかっている。アクシアル リテイリングの原和彦社長は、「人件費を含む経費上昇ぶんは経常利益額の1割以上に相当する。流通小売業界にとって22年度は厳しい年になる」と述べている。

 しかし、経費上昇ぶんをそっくり販売価格に転嫁するのは、店舗間競争が激化しているうえに、消費者の収入が増えていないなかでは容易ではない。かといってこのままでは小売各社の収益は圧迫されてしまうため、コスト低減や、独自商品の拡充など価格だけで戦わなくて済む独自性の追求がいっそう求められる。

 こうした値上げ局面では、独自商品の獲得やバイイングパワーを求めるかたちでの「商品」を軸とする再編も活発化するかもしれない。

 実際、本誌が算出した国内主要食品小売チェーン上位10グループによる食品小売シェアはいまだ約3割にとどまる。巨大なマーケットに業種問わず大量のプレーヤーがひしめく状態で、再編の余地が多分に残されているといえるだろう。

 そのほか、インフレによる消費マインドの低下や、人手不足による人件費高騰、SDGs(持続可能な開発目標)への対応など、流通小売各社には中長期的に取り組むべき課題が多数突き付けられている。これらの対策を打ち生き残っていくには、ある程度の企業規模と投資が必要であり、そうしたなかM&Aという選択肢を選ぶ企業は今後、増えてくると考えられる。

 コロナの収束がいまだ見えないなか22年の小売市場はどのように変化するのか。次はどんなM&Aのニュースが飛び込んでくるのだろうか──。先行きの不透明な今だからこそ、各業態の現状を確認し時流をつかんでおきたい。

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提供元・DCSオンライン

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