SMの再編が加速、異業種でのM&Aも
このように多くの主要業態が“コロナ特需”で活況を呈しているなか、コロナ禍ではM&A(合併・買収)が加速し、大手企業による寡占化が進んでいる。背景には、少子高齢化や人口減少、業種業態を超えた競争の激化などの課題は依然として変わらず存在すること、コロナ特需のなかでも有力企業とそうでない企業間の格差が生じていることなどが挙げられる。
直近の21年にSM業界で最も耳目を集めたのは、エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府:以下、H2O)、とオーケー(神奈川県)による関西スーパーマーケット(兵庫県:以下、関西スーパー)の争奪戦だ。21年8月、関西スーパーがH2Oとの経営統合を発表したが、オーケーがこれに反対し、TOB(株式公開買い付け)による完全子会社化の意思を表明。法廷闘争にまで発展したものの、最終的には最高裁判所がオーケーの抗告を棄却しH2Oによる買収が決定した。21年12月にはH2O傘下のイズミヤ(大阪府)、阪急オアシス(同)と、関西スーパーの3社が経営統合し、これにより営業収益合計で4000億円規模の関西エリア最大シェアを持つグループが誕生している。
イオンは21年9月、マックスバリュ西日本(広島県)とフジ(愛媛県)が経営統合すると発表。すでに、フジがマックスバリュ西日本とフジ・リテイリング(愛媛県:フジの事業会社として21年11月に新設したフジ分割準備会社から商号変更)を束ねる持ち株会社に移行しており、24年3月をめどに、経営統合し新会社を設立予定だ。
SM業界は上位10グループのシェアが約4割といまだ細分化されている状況から、ここにきて寡占化が徐々に進んでいる。
そのほか、DgS業界では21年10月、マツモトキヨシホールディングスと、ココカラファイン(神奈川県)が経営統合して、マツキヨココカラ&カンパニー(東京都)が誕生。上位企業の寡占化は75%を超えた。
HC業界も上位企業によるM&Aが続いており、上位企業のシェアは64.4%となり寡占化が進んでいる。直近では22年3月にカインズ(埼玉県)が東急ハンズ(東京都)を完全子会社化した。
業態を越えた競争が激化するなか、異業種でのM&Aも目立つようになってきた。DgSのクスリのアオキホールディングス(石川県)は、20年6月にナルックス(石川県)を子会社化したのを皮切りに、地方の中小SMを次々と傘下に収めている。最近では22年3月、中核事業会社のクスリのアオキ(石川県)が一二三屋(福島県)、ホーマス・キリンヤ(岩手県)とその関連会社フードパワーセンター・バリュー(岩手県)を吸収合併している。