食パンブームは終わった、と言われる中。モスバーガー(株式会社モスフードサービス 以下 モス)が、食パンを再発売します。

モスの食パンでヤマザキのイメージが変わる理由
(画像=株式会社モスフードサービス プレスリリースより、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

前回は「普通の」(高級)食パン、今回は「チョコ」食パンです。最大の特徴は、プロモーションを兼ねた「長い」商品名です。

「モスバーガーとヤマザキパンでじっくり考えた濃厚なチョコ食パン」

これが商品名です(以下「チョコ食パン」とします)。前回の食パンは、

「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン」

記事では、

・バター好きが求める、「塩バターロール」のようなバターの風味が無い
・スイーツ好きが求める、他店の高級生食パンのような甘味が無い
・主食として、普段使いするにはカロリー(と価格)が高すぎる

など、ターゲットが絞り込まれていない。大手メーカー(山崎製パン株式会社 以下ヤマザキ)が製造しているため、プレミアム感がない。よって、リピーター獲得は難しいのではないか、と推測しました。その後、モスはスケジュール(※)より3か月早く販売を終了しています。

今回の、チョコ食パンは、販売するモス、製造するヤマザキに、どのような影響を及ぼすのでしょうか。考察します。

チョコ食パンとはどのような商品か

新作のチョコ食パンはどのような商品なのでしょうか。

販売方式は、前回と同じ月2回の予約販売のみ。

価格も、前回と同じ600円。少し意外です。チョコ系食パンは、原材料が高いため、価格も食パンより高めにするのが一般的です。高級食パン店「ラパン」では、830円(食パン440円)と、かなり高めに設定しています。

モスは、前回、高級食パン店を超える強気の価格設定でしたが、今回はやや抑えたようです。

味については、高級食パン店 ラパンの「ショコラシフォン生食パン」(以下 ラパン)、スーパー等で販売されている「ヤマザキ チョコゴールド」と比較しました。

以下主観です。

この3点で、いちばん美味しかったのがモスの「チョコ食パン」でした。「適度に甘く、しっとりしているのに、食後感が軽いから」です。

モスの食パンでヤマザキのイメージが変わる理由
(画像=モス「チョコ食パン」 筆者撮影、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

前回のバター食パンでは足りなかった甘味が適度にあるため、スイーツとして楽しめる。ヤマザキチョコゴールドのような「パサパサ感」がなく、高級食パンに求められる「しっとり感」がある。ラパンのような食後の重さが無く、すっきりしている。

「すっきり」には理由があります。脂肪分を減らし、カロリーを抑えているのです。

ヤマザキチョコゴールドは、100グラムあたり369キロカロリー。対して、「チョコ食パン」は331キロカロリー。普通のチョコ系のパンや、前回のバター食パン(392キロカロリー)より低く抑えている。1枚あたりだと、265キロカロリーです。スイーツとして考えれば、許容範囲なのではないでしょうか。

モスバーガーのメリットはほとんど無い

しかし、美味しいとはいえ「チョコ」食パンなのです。サンドイッチやトーストなど、食事として食べる「バター食パン」に比べ、リピートは大幅に少なくなります。

また、販売期間が6月24日までに限定されています。

前回の「バター食パン」の販売量は40万斤でした(※)。売上高は2.4億円、モスの年間売上720億円に占める比率は、0.3%程度。収益への貢献度は高くありません。今回は、リピートが見込めず、販売期間も短いことから、さらに低くなるはずです。モスにとってのメリットは、あまりありません。

では、ヤマザキにとってはどうでしょうか。