自由度低下の懸念

コンビニのAI値下げが嬉しくない理由
(画像=StockSnap/Pixabay、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

これまで、こっそりと行われてきた見切り販売。価格を決めるのは、コンビニオーナーです。つまり、加盟店に最適化した価格設定でした。

一方、今回のAI導入は、コンビニ本部に最適化した価格設定です。

コンビニ大手セブンイレブンは、公正取引委員会の排除措置命令後、以下の方針を定めています。

「見切り販売価格は、仕入れ値を下回らせない(下回る場合は廃棄コストを加盟店が負担する)」

これは、今後の価格設定アルゴリズムにも組み込まれることでしょう。

しかし、本来「価格設定」は経営者が行うもの。集客目的で、仕入値を下回る価格の「目玉商品」(※6)を作るケースもあり得るのです。

価格だけではなく、仕入品目や数量がコンビニ本部に「推奨提示」されるコンビニ加盟店。一般小売店と比べ、経営自由度が、かなり低い。今回の導入本格化をきっかけに、さらに低下してしまわないか。注視する必要があります。

【参考・注釈】

※1

平成21年6月22日の公正取引委員会の排除措置命令以降、緩和されたものの、令和2年9月の調査報告において、「見切り販売をしなかった理由」として、以下の回答が報告されている

・本部の意向に逆らうと契約更新等で不利益が生じるのでは
・契約期間が長く,これからも付き合っていかなければならない
・指導に従わないと不利に取り扱う可能性を示唆された

(コンビニエストア本部と加盟店の取引等に関する実態調査報告書(令和2年9月))

※2 公正取引委員会の実体調査

コンビニエストア本部と加盟店の取引等に関する実態調査報告書(令和2年9月)

※3 廃棄コスト一部負担

セブン-イレブン・ジャパンは,平成21年6月22日の排除措置命令の後,加盟店の全額負担だった廃棄損失(廃棄コスト)のうち15%を本部側が負担すると発表。同業他社も、廃棄損失を一部負担している場合がある。

※4 廃棄コストのロイヤリティへの影響

Aチェーン、Aタイプ(土地・建物を加盟者が用意)の場合

加盟店廃棄商品額:468万円(中央値)
ロイヤリティ率:43%
本部負担:15%
(公正取引委員会実態調査報告書 令和2年9月より)

ロイヤリティ(本部負担無し)=468万円×43%=201.24万円
ロイヤリティ(本部負担あり)=201.24万円×(100%-本部負担比率15%)=171万円≒170万円

Cタイプ(土地と建物を本部が用意)で同計算した場合、222万円となる

※5 ダイナミックプライシング

参考記事
JR東日本のダイナミックプライシングは奏功するか
高値で買ってるのは自分だけ? 浸透するダイナミックプライシング

※6 ロスリーダー政策
来店客増のため、収益を度外視し極端に安価な商品(ロスリーダー)を販売すること。高利益率の関連商品とミックスして販売することが重要となる。

文・関谷 信之/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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