見守るけど見張らない「象印のみまもりポット」

利用者データが送信されているにもかかわらず、多くの人に受け入れられている製品があります。象印の「みまもりポット(みまもりほっとライン)」です。

家電の行動データ収集本格化へ
(画像=『離れて暮らす高齢の親の見守りサービス』
株式会社オヤノコトネットのプレスリリースより、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

サービス開始は2001年。最も古いIoT家電の一つと言って良いでしょう。2001年といえば、ADSLが開始された頃。Wi-FiやBluetoothはありません。そこで、湯沸かしポットの下部にモバイル機器を丸ごと埋め込むことで、データ通信を実現しています。

目的は、離れて住む高齢者の安否確認です。

給湯ボタンを押すと、「ポットを使った時間」が、離れた家族へメールで送信される。機能はこれだけです。しかし、利用している高齢者は「使っていると安心できる」といいます。サービス開始以来、累計契約者は1万3千件を突破(2020年10月13日時点)。なぜここまで受け入れられているのか。

「見られている」という不快感がないからです。

「人は、見られているというのが嫌なんです」
(みまもりポット開発協力者 佐藤医院 網野医師)

開発協力者インタビュー 医師 網野氏|iポット誕生秘話|象印マホービン株式会社

「給湯ボタンを押すと、『ポットを使った時間』が送信される」
「ポットを使った時間が家族に届くことにより、『無事を知らせることができる』」

送信するデータは何か。メリットは何か。どちらも明確です。その結果、給湯ボタンを押すことが、「見られている」という受け身の行為ではなく、「無事を知らせる」という自発的行為になっている。だから、「見られている」という不快感がないのです。

Apple新機能の不安

「見られている」という不安感が跳ね上がった製品があります。AppleのiPhoneです。

米Appleは8月5日、児童保護の目的で3つの機能追加を発表しました。

そのひとつが、児童虐待画像の検出・通報機能です。

iCloudに保存されている「写真」に児童虐待画像が含まれていないか「調査」し、含まれていた場合は、ユーザアカウントを無効にする。加えて、当局(全米行方不明・被搾取児童センター=NCMEC)に「通報」する、というもの。年内アップデート予定のiOS15以降(米国)で適用されます。

「iPhoneで撮った写真が『検閲』される」
「自分の子のお風呂写真でも『通報』されるのでは」

と、不安視されネット上で大変な話題となっています。

Appleは、

「誤ってユーザを当局に報告する確率は、1兆分の1未満」

Appleの児童虐待対策システムに懸念の声 監視システムへの転用を阻止できるのか?|Real Sound|リアルサウンド テック

などと火消しに躍起ですが、不安感の払拭は難しいものと思われます。