5. 日本人はお金を貯めこみすぎ!?
日本経済は停滞が続いているにも関わらず、日本の家計は何故こんなにもお金を貯めこんでいるのでしょうか?
図6は、2人以上の勤労者世帯の貯蓄と負債の変化を比較したものです。左が2002年、右が2020年です。
勤労世帯においては、貯蓄の総額は微増していますがそこまで大きく変わりません。一方で、特に若年世代で持家率が大きく増加したこともあり、負債が増えています。
勤労者世帯は世帯主の収入も減り、生活を切り詰めている傾向が見えます。
(参考記事: 持家増で節約志向を強める家計)
図7は世帯主の年齢階級別の、貯蓄額のシェアです。
2019年の時点で、70%以上もの貯蓄を60歳以上の高齢層が持っている状況です。残り30%弱を60歳未満の世代で分け合っているわけですね。
つまり、日本の家計は圧倒的に多い現金・預金を持っているわけですが、そのほとんどは現在の高齢世代が過去に稼いで貯めた分だという事になります。
これらの多くは、確かに相続によってその次の世代に受け継がれていくのかもしれません。
しかしよく考えれば、平均寿命が80歳を超える日本ですから、相続も高齢者(例えば80~90歳)から、高齢者(60歳以上)へと相続されるだけのケースが多いはずですね。
この場合、結局現役世代には回ってこず、高齢者間で引き継がれていくだけの滞ったお金になってしまいます。
一見豊かに見える家計も、内訳をみると世代間ギャップがこんなにもあるというのは驚きではないでしょうか。
現役世代は世帯主の収入が減り、社会保険料など非消費支出が増える中、共働きが増えて家計収入自体は増加傾向です。
世帯主の収入増と安定した就業という前提が崩れつつある中で、必要以上に節約志向になっている傾向も見てとれます。
これほど多くのお金を高齢層が持っているわけですから、これを積極的に消費に回してもらえるような魅力的なモノやサービスがあればもっと国内経済も活性化していきそうですね。
「老後2000万円必要」という言葉が話題になりましたが、老後の生活に対して必要以上に恐怖心を煽られ、国民全体が節約ばかりを考えるようになり、かえって経済を滞らせしまっている面もあるように思います。
大切なのは現在の高齢者が過去に稼いだお金を羨む事でなく、現在の現役世代が稼ぎを増やして、安心してより豊かに生活していけるようにしていく事ではないでしょうか。
そもそも、世帯主の収入が減って、雇用も不安定になりつつあること自体が異常事態です。
企業経営者が事業の付加価値を向上し、消費者でもある労働者の所得も上げていくという、「あたりまえだけど難しい事」に向き合っていく必要性を感じます。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年4月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。
文・小川 真由/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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