目次
その引用、本当に大丈夫?
「著作権侵害だ!」と指摘されたときの対処法

その引用、本当に大丈夫?

河野:
あと、これは特にライターさんに気をつけていただきたいんですけど、引用のルールを守るというのも重要だと思います。

ぽな:
あくまでも「引用」だから、自分の記事に占める引用の割合を少なくしたり、引用した部分が明確にわかるようにしたり……。

河野:
あとは、出典の明記ですね。記事の信頼度にも関わる部分だと思いますので、引用元がきちんとしているってもともとライターさんにとっては悪い話ではないはずです。

ぽな:
そうですね……。私は法律ジャンルでライターをしているのですが、法律文献をベースに書くことが多くて。しかも、内容や表現を文献に寄せれば寄せるほど記事のクオリティが上がっていくんですよ。そのあたりも改めて気をつけなきゃですね……!

河野:
法律記事はそうなりますよね。あと、引用については「正当な目的があって引用しているのか」も重要な問題になります。

ぽな:
「他のサイトの画像を引用しても、出典を明記しておけばOK」というわけではないと……?

河野:
たとえば、作品の批評をするのに必要だから、あるいは、インタビュー記事でインタビュー相手の過去作品などについて言及する必要があるから、といった理由で、適切な画像を引っ張って引用するのは正当な引用といえるでしょう。

でも、単に「目立つ画像だからアイキャッチに使いたい」になってくると、それは正当な目的があるとは言いにくいですよね。

ぽ な:
元の作品が記事の内容にまったく関係ないケースですね。

河野:
そうそう。あとは引用するにしても、何か紹介するにしても、「相手に不快な思いをさせないように配慮する」ことも大切だと思います。

たとえば宣伝になるなど、相手側にも何か大きなメリットがあれば、それだけでもトラブルになる確率は減らせるんですよ。

「著作権侵害だ!」と指摘されたときの対処法

ぽな:
たぶん、これもあるあるだと思うんですが、そんな事実はないのに著作権侵害をしたと言われてしまったパターンもありますよね。

SNSで著作権侵害をしていると名指しされたり、動画の削除申請をされたりした場合はどうすればいいんでしょうか。これも下手に騒ぐと炎上しますよね……。

河野:
この問題については、権利者本人が騒いでいる場合と、第三者が勝手に騒ぐ場合とがあってですね。はっきり言って、第三者が勝手に騒いでいる場合は無視でいいです。

どこのプラットフォームであっても、権利者以外の人からの削除申請なんて取り合わないですから。もし目に余るようだったら、名誉毀損でこちらからアクションを取るというレベルの話だと思います。

ぽな:
では、相手が権利者だった場合は……?

河野:
権利者本人が何か言っている場合は、「実際のところ、どうなのか」というのをはっきりさせなくてはいけませんよね。事実無根であれば、当然相手の言うことが間違っているわけだから反論していくことになります。

ぽな:
えーと、「たまたま似ちゃった」とか、そもそも「パクリじゃないです、アイディアは似ているかもしれませんが、表現の部分は似てないです」とか。

河野:
そうです。

ぽな:
えーと、相手にSNS上で絡まれちゃった場合なんかはどうすれば……。

河野:
その場合は名誉毀損で相手を訴えるかどうか、という話になりますね。

ぽな:
うーん、なるほど……。これ、難しいんですが「侵害された」と思っている側も「正義は我にあり!」って信じているケースが多そうですよね。自分の作品によく似たものが出てきたら、私だってそう思うだろうし。でも、実際は似ているけど著作権侵害とまでは言えない的な、微妙な場合もなかにはありますよね……。

河野:
うん。これは本来、裁判をやってケリをつけるべきところを、場外で延々とやっているから、どちらも傷つくみたいな話になるんですよね。

ぽな:
場外乱闘は避けましょう、という。

河野:
ある意味「パクリじゃないか」と指摘することは、批評のあり方として間違っていないと思うんですよ。たとえばミステリなら、「トリックが○○と同じで、作品としてのオリジナリティがないじゃん」みたいな意見も目にします。著作権侵害がどうかという以前に、これは立派な批評として成立していますよね。

ぽな:
ミステリ新人賞の選評でよく見るコメントかも……!(笑)

河野:
でもこれって、作者としては「法的に対処する」って問題ではないですよね。正面から受けて立って、「いや、元のトリックはこうだけど、こういう点で工夫しているので、そのあたりはオリジナルです」と反論する。こういった対抗言論が妥当する世界だと思うんです。

ただ、自分が描いてもいないような表現だとか、自分が参考にもしていないし似てもいない作品について、相手が「自分の作品をパクった」と主張していると、さすがに問題です。相手がうそをついている、ということで、単なる批評を超えて名誉毀損になってきますから。このレベルになってくると、さすがに法的措置をとって対抗せざるを得ないでしょうね。