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誰かに仕事を頼む場合にも、著作権侵害リスクはある
「◯◯に似せて作ってください」は危険!?
誰かに仕事を頼む場合にも、著作権侵害リスクはある
河野:
素材サイトに限らず、誰かに仕事を頼むケースにもリスクはあります。たとえば、プロのイラストレーターに頼んだものでも、実は納品された作品がパクリだったと。
権利者からクレームをつけられて、慌ててイラストレーターに連絡をとってみたら、すでにイラストレーター側は音信不通で、みたいなね。
ぽな:
うげげ……。あとはクラウドソーシングで発注したら、やばい成果物が上がってきたみたいなパターンもありますよね。
河野:
そうですね。こうしたトラブルを完全に防ぐのは難しいと思います。だからこそ契約書なりなんなりで相手の身元を追えるようにすることと、「著作権侵害トラブルがあったら、ちゃんと責任をとってくださいよ」という内容を契約書に入れておくこと。この2点が重要ですよね。
もし著作権侵害トラブルが起きてしまった場合、クライアントに請求がきたらクライアント側は1回払わないといけない。ただ、仮に10万円支払うことになったとしても、外注先にあとで請求できれば、一応差し引きゼロにはなりますから。
ぽな:
仕事を依頼する側も慎重になりましょう、ということですね。
河野:
ただ、これは仕事を受けるクリエイター側にとってみれば、怖いことでもあるんですけどね。
納品する側のクリエイターの立場で考えてみましょう。制作物に著作権上の問題があって、クリエイター側がクライアントに責任を追及されるケースを想定してみてください。この場合どこまで損害が拡大する可能性があるのか、ということです。
ぽな:
はい。
河野:
たとえばクライアントが、他人のデザインをパクったクリエイターに損害賠償を請求するとしましょう。でも、作ってしまった商品は、もうぜんぶ廃棄するしかないわけです。極端な話、1億円分の商品を作った後で問題が発覚した場合、損害は1億円ということになります。
ぽな:
怖すぎる! そうなると、クライアントさんと揉めますよね。「あなたの言うとおりにやったらこうなったんでしょうが!」って話になっちゃいます。
河野:
ただ、残念ながら「作品を納品してもらう」という形で仕事を外注している限り、成果物と著作権の問題は切り離せないですよ。
「◯◯に似せて作ってください」は危険!?
ぽな:
これは仕事を受ける側も他人事ではありませんね。「◯◯っぽく描いてください」というクライアントさんの要望通りに動いたら、実は……という場合もあるわけでしょう。
河野:
うーん……。耳の痛いことを言いますが、いくら「クライアントに言われたから」とはいってもですよ。実際に誰かの著作権を侵害するような作品を作っているのは自分ですからね。
ぽな:
うっ……! たしかにそれはそうですね。
河野:
そう考えると、特に名前が表に出る仕事だと非常に怖いです。クライアントの頭越しに直接クリエイター側に請求が来る可能性だってあるわけですよ。相手からしたら、クリエイターとクライアントが共同で著作権を侵害しているわけで、そうされても文句は言えないですよね。
ぽな:
まあそうですよね、名前出ちゃってますしね……。請求する側としたら、正直「取れそうなところからぶんどりたい」というのが人情だと思います。私だって請求する側だったら、迷わずそうしますよ。
河野:
「相手に言われたからやった」というのは、指示を出した相手との間では意味があるけど、著作権者に「だから私は責任ありません」とは言えませんからね。
ぽな:
著作権侵害をやっている側になる以上、さすがに無関係とは言えないですよね……。
河野:
そうです。だから、もしクライアントから「○○に似せて描いてください」みたいな、一歩間違えると著作権侵害になりかねない依頼を受けたら、クリエイター側も一度よく考えてほしいんです。
もしかしたら、著作権侵害にならないような形でクライアントの要望を実現できる可能性もありますから。
ぽな:
ええっと、それはつまり……?
河野:
前回、「アイディアレベルで似ているなら許容されるけど、本質的な特徴、創作的な表現が似ているのがダメだ」という話をしましたよね。逆に言えば、それ以外の部分が似ている分にはセーフなわけです。
河野:
本当に著作権侵害になりうるレベルまで似せる必要があるのか。「何か参考にはしているけど、著作権侵害ではない」というラインを意識していただいて、あとは創作上の工夫として、各クリエイターさんに頭をひねっていただきたいなと思います。