厚労省公表データによる感染予防効果の計算

厚労省の公表データを使って感染予防効果を計算すると、2回接種者では、65歳未満で61%、65歳以上では49%と以前の報告と比較して低下したが、3回目の接種をすることで、それぞれ、92%、85%に回復した。これまで、厚労省の発表する2回接種者には、3回接種者が含まれていたので、3回接種者の感染予防効果が全体の感染予防効果を押し上げていたと考えられる。

このことを考慮しても、ほとんどが、2回目接種から半年以上経過したと考えられる65歳以上の感染予防効果が49%というのは、海外からの報告と比較して大変高い値である。

日本におけるオミクロン株に対するワクチンの効果(続報) --- 小島 勢二
(画像=表2 厚生労働省の公表データに基づくオミクロン株に対する新型コロナワクチンの感染予防効果 、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

感染研公表データによる感染予防効果の計算

一方、感染研のデータには、感染者数は記載されているが、(未)接種者数は記載されていない。感染予防効果の計算には(未)接種者数が必要であることから、日本の年齢別人口統計と首相官邸ホームページに公表されているワクチン接種率を用いて、ワクチン(未)接種者の人数を推定した。

表3には、感染研のデータにもとづいたオミクロン株に対する感染予防効果を示す。2回接種では、65歳未満で62%、65歳以上では-140%と厚労省のデータを使って計算した値と比較して低値であったが、3回目の接種を追加することで、感染予防効果はそれぞれ87%、56%に回復した。

念のために、感染研の発表する感染者数と厚労省の発表する(未)接種者数を用いて計算した感染予防効果は、2回接種では、65歳未満で61%、65歳以上では-79%、3回接種では85%、47%であった。65歳以上の高齢者における厚労省の発表データで算出した感染予防効果と感染研の発表データによる感染予防効果の違いは、厚労省と感染研が発表する65歳以上の未接種者の感染者数が大きく違うことによると考えられる。

日本におけるオミクロン株に対するワクチンの効果(続報) --- 小島 勢二
(画像=表3 国立感染症研究所のデータにもとづくオミクロン株に対する新型コロナワクチンの感染予防効果、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

なお、感染研のデータでは、接種歴不明者が全体の1/3と高い割合を占めていたので、先に述べた理由から、接種歴不明者を、2回接種者、3回接種者の割合に応じて振り分けて、2回接種者、3回接種者の人数に加えた値で計算した感染予防効果を表4に示す。2回接種では、65歳未満で32%、65歳以上で-280%、3回接種では75%、30%と、接種歴不明者を除外して計算した表2と比較して感染予防効果は著しく低下した。

日本におけるオミクロン株に対するワクチンの効果(続報) --- 小島 勢二
(画像=表4 国立感染症研究所のデータにもとづくオミクロン株に対する新型コロナワクチンの感染予防効果
(接種歴不明者を2回、3回接種者に振り分けた場合)、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

感染予防効果の逆転現象?

本論考の目的は、厚労省の発表するわが国のオミクロン株に対する感染予防効果が海外からの報告と比較して高い理由を明らかにすることにあるが、同じ期間の感染研のデータと比較することで以下の推論を得ることができた。

  1. 3月21日の週までは、厚労省が発表する2回接種者には3回接種者が含まれており、3回接種者の感染予防効果が全体の感染予防効果を押し上げた可能性がある。
  2. 入力データが不完全な報告を除外することで、実際よりも高い感染予防効果が得られた可能性がある。

思いがけないことに、感染研のデータを解析したところ、65歳以上では、2回接種者は未接種者と比較してかえって高い感染率を示し、感染予防効果はマイナスの値を示した。この原因として、65歳以上の未接種者の低い感染率が考えられる。感染研の発表データによる65歳以上の未接種者の感染率は厚労省の発表データで計算した感染率の1/3であった。この結果、65歳以上の2回接種者では、未接種者と比較して感染しやすく、感染予防効果の逆転現象が見られた。

65歳以上の未接種者において、厚労省と感染研のどちらのデータが正しいのかを明らかにする必要がある。