目次
電子帳簿保存法改正にどう対応すべき?
電子帳簿保存法に対応しているクラウド会計ソフト3選

電子帳簿保存法改正にどう対応すべき?

電子帳簿保存法改正の内容は理解できたでしょうか……?

色々とムズかしい話もありましたが、「電子帳簿保存法に対応したい!」と思った場合、「電子帳簿保存法に対応した会計ソフト」「会計ソフト/PCの説明書(電子データやオンラインマニュアルも可)」さえ用意できれば、カンタンに対応はできます。

しかし、「電子帳簿保存法に対応するのメンドくさそう……」「本当に電子帳簿保存法に対応する必要はあるの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

実際のところ、「電子帳簿保存法にどこまで対応するかはその人次第」といえます。なぜなら、電子帳簿保存法はその正式名称にもある通り「特例」なので、(電子取引以外は)紙ベースでの対応も可能だからです。

そこで、フリーランスの対応として考えられる

  • 電子帳簿等保存/スキャナ保存/電子取引データの保存に対応
  • 電子帳簿等保存/電子取引データの保存に対応
  • 電子取引データの保存のみ対応
  • 何も対応しない

の4パターンについて、メリット/デメリットを比較してみます。

対応1. 電子帳簿等保存/スキャナ保存/電子取引のデータ保存に対応

対応1は、今回の改正で規制緩和/義務化された3パターンの保存方法すべてに対応した場合です。

最大のメリットは、「ペーパーレス」を実現できること。帳簿や書類を印刷する必要もなければ、紙ベースで受け取った領収書や請求書を保管する必要もありません。じゃんじゃん紙を捨ててOK。

紙がなくなればすべての情報をデジタル化できるため、情報が紙と電子データに混在することがなくなり、会計業務の効率化も図れます。優良帳簿に認定されれば、過少申告加算税が軽減されるのもメリットです。

しかしデメリットもあります。まず、電子帳簿保存法の内容をしっかり理解する必要があること。本記事を含め初心者向けの解説も多くありますが、法律そのものが複雑なので、なかなか整理できない方もいるでしょう。

また、日々の帳簿付けや領収書管理の方法などの変更が必要な場合もあり、変化にストレスを覚える可能性も。会計ソフトによっては利用ソフトの変更/上位プランへの切り替えを求められることもあります。

ちなみに、筆者自身はこの対応をしました。覚えることが多く、会計ソフトのプランを切り替える必要もありましたが、紙の原本をすべて捨てられるのはめちゃくちゃ快適ですよ。

▼対応1のメリット/デメリット

メリット・ペーパーレスを実現できる
・データをデジタルに一元化できる
・(優良帳簿の場合)過少申告加算税が軽減される
デメリット・覚えるべきことが多い
・会計業務の変化によりストレスを感じやすい
・会計ソフトの変更/上位プランへの切り替えが必要になる場合も

対応2. 電子帳簿等保存/電子取引データの保存に対応

対応2は、「電子帳簿等保存/電子取引データの保存に対応する」、言い換えれば「スキャナ保存だけに対応しない」対応です。

スキャナ保存に対応しない理由は、ほかの方法に比べて覚えるべき知識や、必要な会計ソフトの機能が多くなるから。この場合、今まで通り紙を保管するだけでいいので、会計業務もあまり変わりません(電子帳簿等保存は会計ソフトを使っているだけで対応が完了している場合も多く、電子取引データの保存は義務なので原則対応しなければならない)。優良帳簿への認定もしてもらえます。

ただ、この場合はペーパーレスが実現できず、紙と電子データに情報が混在します。「紙の保管義務」と「情報の混在」を受け入れられれば、この対応もアリだと思います。

▼対応2のメリット/デメリット

メリット・覚えるべきことが少ない
・会計業務にあまり変化がない
・(優良帳簿の場合)過少申告加算税が軽減される
デメリット・ペーパーレスを実現できない
・データをデジタルに一元化できない
・電子取引のデータ保存には対応する必要がある

対応3. 電子取引のデータ保存のみ対応

改正によるメリットはいったん無視して、義務化された電子取引のデータ保存のみ対応することも可能です。

新たに覚えることや会計業務の変化はほぼなく、会計ソフトの変更なども必要ないでしょう。会計ソフト大手・マネーフォワードが提供する『マネーフォワード クラウドBox』のような電子取引のデータ保存のみに対応した無料ファイルストレージサービスもあるため、最小限のコストで対応できます。

ただ、ペーパーレス化や紙とデジタル情報の混在を防ぐことができないのはもちろん、電子帳簿等保存を行わないことで過少申告加算税の軽減も受けられません。

▼対応3のメリット/デメリット

メリット・覚えるべきことがほぼない
・会計業務にほぼ変化がない
・追加費用などが発生しない
デメリット・ペーパーレスを実現できない
・データをデジタルに一元化できない
・過少申告加算税の軽減ができない

対応4. 何も対応しない

実は、今回の改正に「何も対応しない」という選択肢もあるんです。義務化されたのは「電子取引データの電子保存」だけで、この義務も2023年12月31日まで猶予があるからです。いずれ対応を求められるので、あまり意味はないのですが……。

ただ、この猶予期間をうまく活用するのはアリです。フリーランスの場合、繫忙期がハッキリしている方も多いと思うので、繫忙期に電子帳簿保存法への対応を急ぐ必要はありません。

電子帳簿保存法に対応しているクラウド会計ソフト3選

電子帳簿保存法に対応できるか否かは、使っている会計ソフトがどこまで電子帳簿保存法に対応しているかもポイントになります。ただ、よく知られた大手会計ソフトでも、実は対応状況がけっこう違います。

そこで、今回はフリーランスに馴染みのある、電子帳簿保存法に対応したクラウド会計ソフト3選をご紹介します。

会計ソフト1. やよいの青色申告オンライン

電子帳簿保存法が改正されて何が変わった?フリーランスが意識したいポイントをわかりやすく解説【税理士監修】
(画像=▲出典:弥生、『Workship MAGAZINE』より引用)

リサーチ会社・MM総研の調査によると、フリーランスの57%が利用し、クラウド会計ソフトのトップシェアを誇る『弥生会計』シリーズ。なかでもフリーランスに必要な機能のみを抜粋した『やよいの青色申告オンライン』はお馴染みのソフトでしょう。

しかし、結論から言えば、ライバルソフトに比べて弥生の対応はスローです。

電子帳簿等保存には対応こそしていますが、「国税関係書類(請求書/領収書など)」の電子保存、「優良帳簿」には非対応(優良帳簿に関しては、デスクトップ版『やよいの青色申告 22』『弥生会計 22』では対応済)。スキャナ保存には対応しています。電子取引データの保存に関しては、弥生の公式HPでも対応の有無が明言されておらず、微妙なところです。

ただ、2022年春に「電子帳簿保存法に対応した証憑(請求書/領収書など)管理サービス」のリリースを予定しているので、遅れを挽回できる可能性も。料金自体はかなり安めなので、対応状況次第では面白い存在になりそうです。

電子帳簿等保存△(国税関係書類、優良帳簿保存に非対応)
スキャナ保存
電子取引データの保存?(明言なし)
料金(税込)初年度:0円(セルフプラン)
次年度:8800円

会計ソフト2. freee会計

電子帳簿保存法が改正されて何が変わった?フリーランスが意識したいポイントをわかりやすく解説【税理士監修】
(画像=▲出典:freee、『Workship MAGAZINE』より引用)

同調査でシェア第2位の『freee会計』。電子帳簿保存法への対応は素早く、そして充実しています。

なんと、『freee会計』は電子帳簿保存法に全プランで「完全対応」。つまり、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データの保存」のすべてにソフト1つで対応できるのです。

電子帳簿保存法が改正されて何が変わった?フリーランスが意識したいポイントをわかりやすく解説【税理士監修】
(画像=▲出典:freee、『Workship MAGAZINE』より引用)

また、freeeの強みには、ソフト内にファイルボックス機能や請求書発行機能があるため、いちいちソフトをまたぐ必要がないところも挙げられます。

ただ、freee最大の欠点は「値段」です。一番安いスタータープランも電子帳簿保存法には対応していますが、ファイルボックスにアップロードできる枚数が5枚/月。月に受け取る領収書が5枚以下というケースは逆にレアだと思うので、ペーパーレス実現は困難です。

freeeでファイルボックスを使う場合、上位のスタンダードプランへの切り替えは必須ですが、料金が約2倍に跳ね上がります。

それでも、電子帳簿保存法への完全対応は素晴らしいと思うので、費用対効果をじっくり検討してみましょう。

電子帳簿等保存
スキャナ保存〇(スタータープランでは月5枚まで)
電子取引データの保存〇(スタータープランでは月5枚まで)
料金(税込)スタータープラン:980 円/月(年払い)
スタンダードプラン:1980円/月(年払い)

会計ソフト3. マネーフォワード クラウド確定申告

電子帳簿保存法が改正されて何が変わった?フリーランスが意識したいポイントをわかりやすく解説【税理士監修】
(画像=▲出典:マネーフォワード、『Workship MAGAZINE』より引用)

同調査でのシェアは第3位に甘んじていますが、『マネーフォワード クラウド確定申告』の魅力は「電子帳簿保存法の対応」と「料金」のバランスです。

『マネーフォワード クラウド確定申告』も、電子帳簿保存法への完全対応を実施。3パターンのすべてをフォローしています。

電子帳簿保存法が改正されて何が変わった?フリーランスが意識したいポイントをわかりやすく解説【税理士監修】
(画像=▲出典:マネーフォワード、『Workship MAGAZINE』より引用)

加えて、フリーランス向けのパーソナルプラン(980円/月 ※年払いの場合)でも、電子帳簿保存法対応に関しては上位プランと差がありません。

一方、細かい点を見ていくと、『freee会計』に劣る部分があるのも事実です。例えば、作成した書類のうち、「固定資産台帳」は優良帳簿の認定を受けられません。また、ファイルボックス機能は『マネーフォワード クラウドBox』に、請求書発行機能は『マネーフォワード クラウド請求書』に分かれているため、いちいちタブを切り替える必要があるのも不便です(データは連携可能)。

今回ご紹介した3つの会計ソフトのなかでは、コスパに優れている点が強みです。

電子帳簿等保存△(固定資産台帳は優良帳簿認定を受けられない)
スキャナ保存
電子取引データの保存
料金(税込)パーソナルプラン:880円/月(年払い)