「キャリアを築くには専門性が必要」と言われることが多くなりました。でも、専門性とは いったい何なのでしょうか。わたしはライターをしていますが、グルメに旅行におもしろ記事まで、書けそうなものは何でも手当たり次第に書いています。自分の専門性って何だろう……そんな悩みを持つ人も少なくないはず。
そんなとき、ふと気付いたのです。「ニッチでオンリーワンなお仕事をしている人の生き方に、専門性を身につけるヒントがあるのでは?」と。
今回お話をお伺いしたのは、背景美術イラストレーターとして活躍する歯車ラプトさん。知られざる背景イラストの世界から、とっておきの営業方法まで教えてもらいました。
目次
背景美術イラストレーターとは?
背景美術の魅力は「世界を創造できるところ」
背景美術イラストレーターとは?
少年B:
初めまして。歯車ラプトさんは、どのようなお仕事をされているんですか?
歯車ラプト:
私はフリーランスの背景美術イラストレーターとして活動をしています。主にゲーム関連企業を中心に背景イラストを制作していて、ADVゲームの背景や、ソーシャルゲームのメイン画面、戦闘画面の背景を担当することが多いです。企画書に載せるための、街や世界のコンセプトアートなども手掛けますね。

歯車ラプト:
ほかにも、フィギュアを設置して写真撮影をするための簡易スタジオ型模型の背景やVTuberの背景画像など、「背景」と名のつくものなら何でも手掛けています。

少年B:
背景専門のイラストレーターなんですね。
歯車ラプト:
仕事は背景イラストがほぼ100%です。Vtuberのアバターは自分のキャラクターの他に4人作りましたが、それ以外はほとんど背景ですね。キャラクター案件もやりたいんですが、どうしても背景を頼まれることが多いので、最近は自分でも「背景美術専門イラストレーター」と名乗っています。
背景美術の魅力は「世界を創造できるところ」

少年B:
失礼ながら、どうしてもキャラクターが主で背景は従というイメージがあるんですが……。背景を描く楽しさとはどういうところにあるんですか?
歯車ラプト:
なんといっても、世界を創造できることです。確かに、イラストのメインはキャラクターになりがちだと思うんですが、「そのキャラクターを自分の好きな場所に連れて行ける」背景の魅力を、私は強く感じています。

少年B:
「キャラクターの活躍する世界の創造主になれる」という部分でしょうか。
歯車ラプト:
もちろん、架空の世界を作るとなるとそうなりますね。だけど、現代の日本を描くこともありますし、過去や未来などの時間を超えることもあります。そう考えると「どんな世界、どんな場所にもキャラクターを連れ出せる」といったほうが近いかもしれません。

少年B:
なるほど……! 逆に、背景イラストの難しい部分はどういった点ですか?
歯車ラプト:
実際にキャラクターがそこに「いる」「ある」と見せるためには、リアリティが必要になってきます。たとえば自由の女神像の横に松の木があったら、違和感がありますよね。その世界や場所にあるべきものがあるか、バックボーンを考えて整合性を持たせるのは難しいと思います。
現実にある場所なら資料をもとに描けますが、架空の都市やファンタジーの世界など、現実から離れた場所になればなるほど「その世界で住んでいる人たちがどういうものを使っているのか」「そもそも何があるのか」といった想像力が大事になってきます。

少年B:
以前この連載で「空想地図作家」のかたにお話を伺ったことがあるんですが、「架空の街の地図を作るにはリアリティが大事。知識量が増えるたびに描き直している」と話されていました。
歯車ラプト:
まさにそういった部分ですよね……。アニメなどでよく「作画崩壊」と言われることがあるじゃないですか。階段が大きすぎたり、鳥居が小さすぎたりする。そんなふうに背景に違和感があると、見る人はそこにばかり目がいってしまうんです。背景はメインではないかもしれませんが、決して手を抜ける場所ではありません。
少年B:
何でもダイナミックに描けばいいってわけではないんですね……!
歯車ラプト:
魅力的なキャラクターを描くときは、いきいきしたポーズや表情などが問われてくると思います。それに対して背景の場合は「いかに自然にその世界へ行きたいか」と思わせられるかどうかがポイントなのかな、と考えていますね。