ガイドとしての仕事も経験して、一人では潜れないことを実感

今回の茂野氏のチャレンジは、「ロビンソンダイビングサービス」の協力の元、行われた。
ガイドとしてダイバーのケアをしてきた経験がある茂野氏は、スタッフとしても現地で働き、ダイビング前の準備、ガイドなども実践し、写真家としての視点以外にも流氷ダイビングについての知識と経験を深めたようだ。

知床半島で流氷と向き合った1ヶ月 水中写真家・茂野優太のチャレンジ、その成果は⁉
(画像=流氷の天使・クリオネ。多く見つかる日もあれば見つからない日もあって、撮影に苦戦した、『オーシャナ』より引用)
知床半島で流氷と向き合った1ヶ月 水中写真家・茂野優太のチャレンジ、その成果は⁉
(画像=フウセンクラゲ。流氷下ではさまざまな浮遊する生物、クラゲ類が見られる、『オーシャナ』より引用)

Q5 1ヶ月を振り返り、今思うこと、これからやりたいと思うことなどは?

A 流氷ダイビングのスタッフも体験して感じたことは「ダイビングは一人ではできない」ということです。去年初めての流氷ダイビングで痛感したことが「いつもの自分でいることの難しさ、そしてその大切さ」。やはりマイナスの水温、頭上閉鎖という極限の状況下でのダイビングでは、冷静に撮影をすることができませんでした。

今年は、一人でこの海に潜れるようになりたいう思いからスタッフとして潜りました。それはソロダイビングすることでなくて、一人前のダイバーとして、という意味です。
しかし実際にやってみて感じたのは、一人のダイバーが海に入るまでには、氷を割って安全に潜れるエントリー箇所を作ったり、フルフェイスのマスクで視界が狭くなった中、器材をチェックしてくれるダイバーが必要不可欠だということ。また安全にエキジットできるようにロープを送り出したり、引いてくれる陸上スタッフがいたりと、「一人では潜れない」ことを知りました。

知床半島で流氷と向き合った1ヶ月 水中写真家・茂野優太のチャレンジ、その成果は⁉
(画像=ゲストのケアをする茂野氏(撮影:オーシャナ編集部)、『オーシャナ』より引用)

今までは自然の美しさや壮大さ、可愛らしさといった、その瞬間を撮影したいと思っていましたが、これからはストーリーを写真の中に込めたいと思うようになりました。

今、なぜ自分がこの海に潜れているのか?この海で撮影するべき被写体は何なのか?
どういったストーリーでこの海がダイビングポイントとしてメジャーになっていったのか。
自然の作り出すストーリー、四季の生み出すストーリー、その地を開拓した人のストーリー。いろんなストーリーの中に自分がいて、その中で撮影、作品を作っている。そんなことを意識して撮影したい。

実際に現地のガイドさんのようにずっとその海に潜ることはできませんが、できるだけ撮影のスケジュールを長くとって、良いとこどりをするのではなく、じっくりとその海に向き合いたい。今はそう思っています。

知床半島で流氷と向き合った1ヶ月 水中写真家・茂野優太のチャレンジ、その成果は⁉
(画像=爆弾低気圧により、港の中にも流氷がびっしりと入ってきた日もあった、『オーシャナ』より引用)

1ヶ月という長い時間を、ひたすら流氷と向き合い撮影してきた茂野氏。これからの水中写真家としての活動には「北の海」という選択肢が増え、さらに作品の幅が広がっていくことだろう。今後、茂野氏がどんな作品を見せてくれるのか、とても楽しみだ。


Profile
水中写真家 茂野優太

知床半島で流氷と向き合った1ヶ月 水中写真家・茂野優太のチャレンジ、その成果は⁉
(画像=『オーシャナ』より引用)

「まだ見たことない世界を見てみたい」をモットーにダイビングに関わることは、なんでもこなす。学生時代にダイビングにハマり、銀行員に就職するもダイビングの魅力が忘れられず、ダイビングの世界に。

提供元・oceanα

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