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意外にも色がある、流氷下の世界
「地形ポイントのような流氷の写真」が撮りたかった

意外にも色がある、流氷下の世界

流氷ダイビングというと、海の青と氷の白の2つの色の対比が頭に浮かぶ。しかし茂野氏の話を聞いていて印象的だったのが、意外にも彩りがある世界だったということだ。

知床半島で流氷と向き合った1ヶ月 水中写真家・茂野優太のチャレンジ、その成果は⁉
(画像=浅瀬に残っていたいくつかのコンブたち。流氷が波で動かされることにより、このコンブの根を削り取っていき、そこに春に向けて新たなコンブが生える土壌になる、『オーシャナ』より引用)
知床半島で流氷と向き合った1ヶ月 水中写真家・茂野優太のチャレンジ、その成果は⁉
(画像=もっとも印象的だったのがスガモの美しい緑色の風景、『オーシャナ』より引用)

Q3 最も印象的なシーンや、「撮れてよかった」と思った瞬間は?

A 「撮れてよかった」と思ったのは、流氷下の色のグラデーションを表現できたこのシーン(下の写真)です。流氷というと青のイメージが強い人が多いと思いますが、光の角度によって本当にいろんな色を見せてくれます。緑がかった色や爽やかな青、そして濃く黒っぽい紺色だったり……。それは写真での表現の上、欠かせない色のグラデーションです。

流氷の下では、植物性プランクトンの出す独特な黄色の世界が作り出されることもあります。流氷はロシアのアムール川の水が凍って塊となり、知床に流れ着きます。川の豊富な鉄分を含んだ水は、植物性プランクトンにとって格好の栄養になり、流氷が溶け出すと、その周りに大量のプランクトンが集まり、黄色く染め上げていくのです。

さらにはこの植物性プランクトンを狙って動物性プランクトン、小魚、捕食者、そしてシャチなどの大型の捕食者が集まり食物連鎖が始まっていくのです。流氷下特有の食物連鎖の一端となる光景を美しい色と形で表現できたことは長期で滞在した意味があったし、今回の滞在で一番印象に残りました。

知床半島で流氷と向き合った1ヶ月 水中写真家・茂野優太のチャレンジ、その成果は⁉
(画像=手前の黄色が植物性プランクトンの作る色で、奥の青が海と氷の色、『オーシャナ』より引用)

「地形ポイントのような流氷の写真」が撮りたかった

茂野氏は出発前に「地形ポイントのような流氷の写真が撮ってみたい」と話してくれていた。そして今回の作品を見て、「こういうことだったんだ」と納得。

Q4 今回撮影した中で、一番のお気に入りの作品は?

A 一番を決めるのは本当に難しいですね……。上の植物性プランクトンのグラデーションも気に入っていますし、北海道らしいコンブと流氷もいいし、流氷下のマイナス水温の世界にもスガモという緑の海藻が生い茂る写真も気に入っています。

ただ、あえて一番を決めるなら、この写真です。

知床半島で流氷と向き合った1ヶ月 水中写真家・茂野優太のチャレンジ、その成果は⁉
(画像=巨大な流氷が頭上を覆うと、その下は暗くナイトダイビングをしているような気分になる、『オーシャナ』より引用)

流氷ダイビングとはどういうダイビングと聞かれた時に、僕は「毎日変化する地形ポイントに潜っているような感じ」と答えていました。その流氷の作り出す独特な凹凸のある造形と、下側は岩盤でまさに洞窟のような地形ポイントのような雰囲気の写真が撮れました。
またダイバーを入れることで冒険している感じや流氷の大きさを表現できた一枚です。