積雪広大寒冷地なので化石燃料利用率が高い
北海道民は寒さと雪のなかで4か月間暮らすので、各世帯では180リットル入りの灯油タンクを常備して、外気がマイナス温度でも部屋のなかは22度前後になるように暖房の温度管理をしている。加えてJR北海道の赤字路線廃止が続くため、広大な面積の物流はトラックに頼るしかなく、二酸化炭素をはじめ「温室効果ガス」の排出比率が高くなる注5)。ちなみに(B)に掲載されたデータによれば、北海道の家庭用灯油の購入量の多さが分かるであろう(図1)。

出典:『マルシェノルド』(北海道開発協会、2022年)12頁
※ ただし、2人以上の世帯。総務省統計局『家計調査』(2019年)より、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)
北海道の購入量は全国平均の5倍であり、同じ積雪寒冷地の東北地方よりも約1.5倍になっている。ただし夏のエアコン冷房は世帯単独ではほとんどなされないので、通年で見ればエネルギー費用として電気料金と灯油購入費の世帯合計は、他の地方よりも格段に高くなるというわけではない。
図2は全国と北海道の「二酸化炭素の排出量」の比較である。2015年の国勢調査では、製造業に代表される第2次産業就業比率が16.9%でしかなく、全国平均の23.6%にはるかに及ばない(総務省統計局『社会生活統計指標2022』:85)。そのため、「産業」や「業務その他」における排出量は全国平均よりも4%低い。しかし「平均世帯人員」は東京都に次いで少なく、2.13人というように小家族化が進行して、総世帯数は全国7位の244万世帯を数える(同上:20)。その分だけ「家庭」が多く、二酸化炭素の排出量は全国平均より8.4%も増えることになる。これは北海道特有の事情だから、そのまま受け入れるしかない。

出典:『マルシェノルド』(北海道開発協会、2022年)11頁、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)
過半数が「石油系」エネルギー
では、一次エネルギー供給はどのような実態にあるか。図3から明らかなように、北海道の一次エネルギー供給の特徴は、過半数を「石油系」が占めているところにある。

出典:『マルシェノルド』(北海道開発協会、2022年)12頁、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)
これは灯油購入量と火力発電依存に象徴されるが、加えて「3.11」以降は全国的な「反原発」の運動により泊原発1号機2号機3号機すべてが停止しており、全国では「原子力」比率が1.4%だが、北海道はゼロのままで推移してきた。
同時に全国の「天然ガス・都市ガス」23.4%に比べると、北海道のそれはわずか4.5%にすぎない。その他では「石炭系」も「水力」も「新エネルギー」=「再エネ」の比率は全国平均と変わらない。すなわち、「再エネ」によるエネルギーは7.8%であり、今後「脱炭素社会」形成に向けて、この比率を飛躍的に高めることを知事が本特集で宣言したことになる。
確かに図4で見るように、「一人当たりの温室効果ガス排出量」は全国平均よりも多い。家庭用、製造業、交通運輸業、商業販売などで排出された「一人当たりの温室効果ガス排出量」合計が基礎になった一人当たり年間排出量で見ると、北海道のそれは13.2トンであるが、全国は9.9トンに止まっている。しかしこれもまた、積雪寒冷地ならではの灯油使用量と火発依存によるところが大きい。

出典:『マルシェノルド』(北海道開発協会、2022年)12頁
※ t-CO2は二酸化炭素1トンを意味する単位で、「トンCo2」と呼ぶ、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)
諸データによる北海道特性を踏まえて、道庁は数回の「北海道地球温暖化対策推進計画」を策定して、図5のような2030年の「中期目標」を掲げるに至った。本特集の狙いもまた、この「中期目標」達成のための議論を積極的に呼び起こすところにある。

出典:『マルシェノルド』(北海道開発協会、2022年)11頁、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)