心理学者としての違和感
ですが、心理学者である私には本当に大切なことにあまり触れられていないことに違和感を持ったまま今に至ります。
もちろん、いかなる暴力は許されるはずもなく、社会的文脈の理解に置いける発達障害とされる方々の苦悩の啓発も重要な問題です。日米の人間観の違いを理解することも、大切なテーマです。
しかし、それでも同じくらい、いえもしかしたらそれ以上に大切かもしれない何かがあまり話題になっていないのではないでしょうか。
「ヒト」という生き物とは?
私が気になるそれは、親族を侮辱されたときの心の痛みです。
想像になりますが、クリス・ロック氏がウィル・スミス氏自身をネタにジョークを飛ばしていたならこのようなことは起こらなかったのではないでしょうか。
成功した俳優であるウィル・スミス氏は、本来は大人の分別を備えています。周りがいかなる時も良識ある行動を期待するのも当然です。
しかし、成功した人物であっても、それ以前に「ヒト」という生き物です。
この生き物は自分にとって大切な誰かが傷つけられることで、自分自身が傷ついたとき以上の心の痛みを覚えるものなのです。