一時入札には外資ファンドが残り、5月に売却先を決定
昨年、米国大手投資銀行が、日本の不動産を狙った「日本ファンド」を次々と作ったことは記憶に新しい。このディールは2022年2月に一時入札が終わり、東洋経済オンラインの報道によれば残ったのは、ゴールドマン・サックスなど投資銀行や、投資ファンドなど4社。二次入札に進み、5月の株主総会で売却先が決まるようだ。
再建屋の私は、いつもこの段階で声がかかる。「この会社はどうすれば再建できるのか?」「この会社の強みはなにか?」「いくら儲かるのか?」などだ。
しかし、こうした依頼が、私を含めた再建屋にこないこともある。それは、そもそも事業再生を目的とせず、荒療治で儲ける手法をとる場合だ。
日本のアパレルは、欧米の竹を割ったような綺麗で単純なロジックを理解していない。彼らは「赤字事業はやめろ」「この事業が儲かっているからこれに集中しろ」「金は、赤字会社を売った金で補填しろ」という、中学生でもわかる論理で攻めてくる。これに対して日本の旧態依然とした会社ができる一般的な反応とすれば、「ドラスティックすぎる。我が社の文化に合わない」だ。しかし、合うも合わないも金が尽きて破綻するのだから仕方ない。金が山のようにあって、非上場オーナー企業なら、煮るなり焼くなり好きにすればよいが、そうでないから投資銀行やファンドに売却されるのだ。
私は数多くの投資銀行やファンドの人達と関わってきたが、彼らとて他人から預かったお金を運用して運用益を出さねばならない。人様の金をいい加減な投資に使うわけにはいかない。だから、彼らは「確実に儲かるものにしか投資はしない」。レナウンが破綻したとき、引受先が一社も表れなかったのが良い例だ。無価値なものには手を出さないのが投資銀行、投資ファンドである。
それでは、そごう・西武が持つ5000億円の価値とは何か。それは、日本の一等地にある不動産価値だろうと私は思っている。今、日本の特に都心部は不動産バブルになっており、高価なタワマンの最上階を外国人がどんどん買っている。日本の一等地にある不動産は、百貨店事業をやめれば、もっと儲かる事業が山のようにあると考えているようだ。つまり、百貨店店事業から撤退し、都内一等地にある不動産をさらに儲かる業態にするということである。しかし、投資銀行、ファンドの売却価格は取得価格の5倍から10倍と言われており、5000億円で買えば2兆〜5兆円で売却せねば真尺に合わない。ましてや、百貨店事業から他業態へ変化するための投資原資や(ないことを祈るが、リストラ費用など)も必要となり、この場合、様々な方法で買い取り価格を圧縮する方法を、ステークホルダーと握っている可能性があるように思う。少なくとも、このような場面を数多くみてきた私には、綺麗なディールにはならないだろうと思うし、ソフトバンクグループがアームのエヌビディアへの売却を諦め、自社グループでのIPOを目指すようにディールブレーク(M&Aが流れる)する可能性もある。
それが、金融の論理というものである。
2022年、借金と在庫まみれになった日本のアパレル産業は、「資本主義の論理」を目の当たりにすることになるだろう。私は、こうした恐怖を煽っているのではない。むしろ、可能な限り私にできることをやり、事業価値を上げる(敵対的買収を避けるためには事業価値を上げることだ)お手伝いをしたいと思っている。今、アパレル企業の経営層、管理職に必要なことは、世界の潮流を正しく掴み、M&A、オフショア、DXの3つを、自らがゼロから学ぶことだ。
IFIビジネススクールで、「DX、D2C、ESG経営研究会」を立ち上げます。このスクールは5月からスタートし、10名程度の少人数で、完全オンラインで海外をも対象にグループをつくり、世界の潮流の理解とDXやD2Cを正しく理解するものです。すでに、半数は埋まっています。対象は、管理職以上のアパレル、アパレル小売、繊維商社、繊維工場、金融機関、デジタルソリューションプロバイダー、コンサルタントの方です。お申し込みはこちらまで。
お申し込み、お問い合わせは以下からです。
「DXとD2CによるESG経営」研究会
応募/お問い合わせ先: Info@ifi.or.jp
TEL:03-5610-5701 担当:碓井
提供元・DCSオンライン
【関連記事】
・「デジタル化と小売業の未来」#17 小売とメーカーの境目がなくなる?10年後の小売業界未来予測
・ユニクロがデジタル人材に最大年収10億円を払う理由と時代遅れのKPIが余剰在庫を量産する事実
・1000店、2000億円達成!空白の都心マーケットでまいばすけっとが成功した理由とは
・全85アカウントでスタッフが顧客と「1対1」でつながる 三越伊勢丹のSNS活用戦略とは
・キーワードは“背徳感” ベーカリー部門でもヒットの予感「ルーサーバーガー」と「マヌルパン」