素材や肥料の価格が暴騰に転じた

たとえば、北欧諸国での鉄筋棒鋼の価格推移をご覧ください。

2%超えさえむずかしかったインフレ率が急加速する条件は整った
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

2020年まではトン当たり400~600ユーロのボックス圏で推移していた鉄筋棒鋼価格が、2021年初めから突然急上昇に転じ、ロシア軍によるウクライナ侵攻があった2022年2~3月には1250ユーロと、1年強でほぼ2倍の暴騰を演じました。

あるいは、アメリカのタンパ市場での代表的な肥料、アンモニアのトン当たり価格です。

2%超えさえむずかしかったインフレ率が急加速する条件は整った
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

こちらは、2021年の年初にはトン当たり400ドル前後だったものが、直近では1625ドルと4倍に値上がりしています。これはほんとうに深刻な事態です。

というのも、我々先進諸国の人間が世界中で大手金融業者がドミノ倒しで破綻していくことを心配していた2008年には、アンモニアという重要な肥料の突飛高によって農産物の不作・凶作が相次ぎ、発展途上国などでは飢餓暴動が実際に起きていたからです。

21世紀に入っても飢餓暴動は起きていた

次のグラフをご覧ください。

2%超えさえむずかしかったインフレ率が急加速する条件は整った
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

これは、国連直属機関の中では大スポンサーの意向に振り回されずに済んでいるほうで、比較的良心的な食糧農業機関が算出している食品価格指数です。

この指数が初めて130台に乗せた2007~08年には、世界的な規模で食品値上がりに抗議する暴動が起きていたのです。

ごく最近になってからこの事実を知った私としては、いくら当時は外資系大手金融機関に勤務していたからとは言え、この事実を知らずに金融業界の動向ばかり気にしていたことを反省せざるを得ません。

また、食品価格指数が140目前まで接近した2011年には「アラブの春」と呼ばれたアラブ系イスラム圏諸国での大衆運動が続発しました。

2010年末のチュニジアの暴動に始まり、エジプトのムバラク政権、リビアのカダフィ政権、イエメンのサレハ政権と長期政権が次々に崩壊しました。

すでに食品価格指数は140台に乗せている上に、アンモニア価格が1年強で4倍に値上がりし、貧しい農民の多い国々では肥料を節減しなければならなくなる今後1~2年、世界の食糧需給がかなり逼迫することが懸念されます。

ロシア・ベラルーシはともに肥料輸出大国

さらに問題を複雑にしているのが、現在ウクライナへの軍事侵攻によって国際世論から孤立しているロシア・ベラルーシの両国がともに肥料輸出大国だという事実です。

2%超えさえむずかしかったインフレ率が急加速する条件は整った
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

ご覧のとおり、ロシアは肥料輸出額世界1位、ベラルーシも同6位であり、2カ国で約100億ドルの輸出をおこなっているのです。

先進諸国中心に極端に傾斜した大手マスメディアの報道だけを見聞きしていたのではわかりませんが、ロシアへの経済制裁に賛同しているのはほとんど先進国だけで、アジア・アフリカ・南アメリカの中所得から低所得の国々は、ほとんど制裁に参加していません。

肥料供給に支障をきたしたら、農業生産に深刻な影響が出ることを警戒しているのかもしれません。