フリーランスの年金をカバーできる制度
会社員とフリーランスの年金制度を比較した結果、受給額の観点では「かなりフリーランス不利」な現状が見えてきたかと思います。
しかし、「厚生年金を勝手に天引きされない」というのは、フリーランスの長所にもなるのです。確かに厚生年金は会社負担分を考えるとおトクですが、代わりにフリーランスの手元には「老後向け資産形成に使える現金」が残りやすく、運用によっては会社員を上回るパフォーマンスを発揮する可能性を秘めています。
ここでは、フリーランスの年金をカバーできる制度をご紹介します。
制度1. 国民年金にプラスできるオプション
フリーランス(第1号被保険者)が加入する国民年金に、任意でプラスできるオプションが3つあります。このオプションを利用することで、老後にもらう年金(老齢基礎年金)を多く受け取れます。
どのようなオプションがあるかまとめました。
概要 | 保険料 | |
付加年金 |
老齢基礎年金に「付加年金を納めた月数×200円」が加算されます。 例)30歳から60歳まで30年間収めると、「360ヶ月(30年分)×200円」の72,000円が年金にプラスして支給されます。 |
付加保険料 月額400円 |
国民年金基金 |
会社員の厚生年金に相当する制度で、口数制で加入し、将来の年金受取額を増やすことができます。 加入すると、60歳まで掛金の支払いが続きます。 |
月額上限68,000円 ※月額掛金は、加入する年齢、性別、加入口数、給付型によって変動します。 ※国民年金基金加入中は、付加保険料を納めることができません。 |
個人型確定拠出年金 (iDeCo) |
毎月掛金を積み立て、運用した利益分を60歳以降に年金や一時金として受け取る制度です。 |
月額上限68,000円 ※自営業の場合 ※国民年金基金と併用できますが、2つ合わせて月額上限が68,000円です。 |
どれも所得控除の対象ですので、節税効果が期待できます。
iDeCoについては、以下の記事で詳しく解説していますので、関心のある方はこちらもご覧ください。
制度2. 個人年金保険
ここまでは公的年金のお得な制度についてご紹介してきました。しかし、年金には生命保険会社が提供する民間の個人年金保険もあります。国民年金のように加入義務はありませんので、任意で、加入したい保険に加入しましょう。
個人年金は終身年金/有期年金/確定年金など色々な種類があるので、自身の価値観やライフプランなどに合わせて検討してみることをおすすめします。
また、個人年金も控除の対象となるものもあり、控除する場合は生命保険会社から送られてくる『生命保険料控除証明書』をもとに確定申告します。
制度3. 小規模企業共済
フリーランスを含む中小事業者が加入できる「小規模企業共済」も老後の資産形成に役立ちます。
小規模企業共済は、積立式の共済制度です。廃業/退職したときに、積み立てた掛金に対して上乗せしたお金を給付してくれます。「自分でつくる退職金」ともいえるでしょうか。積み立てた掛金は、全額所得控除になるので、節税対策ができます。
小規模企業共済については、以下の記事で詳しく解説していますので、関心のある方はこちらもご覧ください。
【ケース別】こんなとき、年金はどうなる
フリーランスの年金の基本はご理解いただけたかと思いますが、年金は職業/家族構成などによって支払い額が変動する制度。
- フリーランスから会社員に戻った
- 結婚/離婚した
- 子どもが生まれた
などの変化が生じた場合は、年金の支払い額の確認と手続きが必要になるケースもあります。
そこで、以下ではフリーランス人生のなかで想定されるいくつかのケースを取り上げ、「人生のこんなとき、年金はどうなる?」というシミュレーションを行ってみます。
ケース1. 学生やフリーターからフリーランスになる場合
国民年金に加入している学生やフリーターがフリーランスになる場合、そのまま継続して国民年金に加入し続けます。つまり手続きは必要ありません。
ただ、引越しを伴う場合は、住所変更が必要です。
ケース2. フリーランスから会社員になる場合
フリーランスから会社員になる場合、厚生年金を国民年金へ切り替えたのと逆に「国民年金から厚生年金への切り替え」が必要です。
ただ、この場合は基本的に就職先の会社に手続きをやってもらえるので、会社の指示通りに動けばOK。会社員の便利さが分かるのではないでしょうか。
ケース3. フリーランスが結婚した場合
国民年金に加入しているフリーランスが結婚すると、状況によって手続きが異なります。
まず、自身の氏名や住所が変わる場合は、新しい氏名や住所に変更します。結婚後もフリーランスとして仕事を続ける場合、年金は変わらず国民年金のままで大丈夫です。
もし結婚を機にフリーランスを辞める場合、配偶者が国民年金の場合はそのまま国民年金を支払い、配偶者が勤務している場合は支払いが不要となります。
次に配偶者の年金手続きです。フリーランスの配偶者となる妻や夫が結婚後も仕事を続ける場合、年金手続きは氏名/住所などの変更のみで済みます。結婚を機に仕事を辞める場合は配偶者も国民年金に加入します。
ケース4. フリーランスが離婚した場合
フリーランスが離婚すると、状況により手続きが必要です。
おもな例をまとめました。
離婚時の状況 | おもな手続き |
夫婦二人とも国民年金に加入しており、フリーランスを続けるため就職の予定がない | 氏名/住所の変更 |
フリーランスや主婦で国民年金に加入していたが、離婚して就職することになった | 国民年金を脱退し、就職先で厚生年金の加入手続きをしてもらう |
主婦が年収130万円未満など第3号被保険者(扶養される配偶者)の範囲でフリーランス収入を得ていたが離婚した | 第3号被保険者の資格を喪失し(配偶者の勤め先が手続きしてくれる)、自身で国民年金に加入する |
ケース5. フリーランスで子供が生まれた場合
国民年金は20歳から加入するので、お子さんが生まれても特段の年金手続きは必要ありません。国民年金には扶養控除という制度はありません。
ただし、出産前後は保険料の納付が一定期間免除される嬉しい制度があります。この制度は免除されても年金は納付したものとカウントされ、前納していたらその期間は全額返金されます。
ケース6. 主婦(夫)のパートナーがフリーランスになった場合
主婦(夫)がフリーランスを始める時、年金手続きが必要かどうかは収入の有無で変わります。
おもな例をまとめました。
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国民年金 ※フリーランスや自営業など(第1号被保険者) |
厚生年金や共済年金 ※会社員や公務員(第2号被保険者) |
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フリーランスとなる主婦(夫)の年金手続き | 収入130万円未満 | 収入の有無に関わらず国民年金に加入 ※すでに加入している場合は手続き不要 |
扶養される主婦(夫)が第3号被保険者で、収入が130万円未満なら、第3号被保険者のままで、国民年金への加入は不要。 ※扶養者の収入は配偶者の収入の半分未満であること |
収入130万円以上 | 同上 | 第3号被保険者(扶養)の対象にならず、第1号被保険者として国民年金に加入。 |
ケース7. フリーランスが海外移住する場合
国民年金に加入しているフリーランスが海外移住する場合も、年金手続きが必要です。
国民年金は日本在住者が対象ですので、移住や海外赴任で海外在住となると国民年金に加入する義務はなくなります。つまり脱退できますが、日本国籍の方は任意で国民年金に加入できます。