目次
相続放棄をするとどうなる?
・相続放棄をすると後順位の相続人が相続する
・全員が相続放棄をした場合
相続放棄ができないケース
・遺産を使ってしまった
・相続放棄手続きの期限を過ぎた
相続放棄をするとどうなる?
相続放棄をした場合、誰がどのように財産を引き継ぐのでしょうか。相続には優先順位があり、先順位から後順位の相続人に引き継がれるのがルールです。「全員が相続放棄をしたケース」についても解説します。
相続放棄をすると後順位の相続人が相続する
民法で定められた相続人は「法定相続人」とよばれます。法定相続人になれるのは「配偶者」と「一部の血族」です。配偶者はほかにどの血族がいても必ず相続人となり、血族は順位が高い人が優先されます。
- 第1順位:被相続人の子及び代襲相続人(孫・ひ孫)
- 第2順位:被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)
- 第3順位:被相続人の兄弟姉妹及び代襲相続人
例えば、第1順位の相続人である「子」が相続放棄をした場合は第2順位へ、第2順位が放棄をした場合は第3順位へといったように、後順位の相続人が相続をする決まりです。
法定相続人である子が死亡している場合は、代襲相続人である「孫」が相続します。ただし、子が相続放棄をした場合は「相続人の孫への相続もない」と考えましょう。
全員が相続放棄をした場合
民法940条(相続の放棄をした者による管理)には、相続放棄をした相続人に「財産の管理義務があること」が明記されています。
法定相続人全員が放棄する場合は、「相続財産管理人」を立てたうえで、その財産を適切に管理しなければなりません。相続財産管理人とは、相続放棄をした相続人に代わって「財産の管理・清算」を行う人です。
具体的には、家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てを行い、相続財産管理人を選任してもらいます。
借金がある場合は、相続財産管理人が債権者への支払い手続きを行い、プラスの財産は、「国庫(国の資金)」に引き継ぎます。財産がなくなった時点で清算手続きは完了です。
出所:民法 | e-Gov法令検索
相続放棄ができないケース
相続で「単純承認」が成立すると、相続放棄ができなくなります。単純承認はいつ・どのような場面で成立するのでしょうか?代表的な二つのケースを紹介します。
遺産を使ってしまった
相続人が個人の遺産を使い込んだ、または勝手に処分をした場合は「財産を相続したもの」とみなされます。相続放棄は「一切の財産を引き継がない」という意味です。「少しだけだから」といって財産に手を付けると、放棄が不可能になってしまいます。
同様に「被相続人宛ての請求書を支払う」「財産である建物を取り壊す」「不動産を売却する」などの行為にも注意が必要でしょう。
葬儀費用を被相続人の財産から支出するのは単純承認にはあたらないといわれていますが、費用が不相当に高額な場合、単純承認が成立する可能性があります。
相続放棄手続きの期限を過ぎた
相続放棄の手続きができるのは、「自己のために相続の開始があったことを知った日から3カ月以内」です。
「相続の開始があったことを知った日」とは、「死亡を知った日」と考えるのが一般的です。期間内に家庭裁判所に相続放棄の申し立てをしなければ、相続放棄は認められません。
ただし「財産の全容を知るのに時間がかかっている」など、やむを得ない事情で期限内に手続きができない場合、裁判所に申し立てを行えば、期間の延長が可能なケースがあります。
また過去には「被相続人には相続財産がまったくない」と信じ、期限内に相続放棄をしなかったケースにおいて、最高裁に相続放棄が認められた判例があります。この場合、「相続財産がまったく存在しないと信じる相当な理由」があったからこそ、相続放棄が認められたといえるでしょう。
「忙しくて通知を見ていなかった」「手続きをする時間がなかった」「法律を知らなかった」などの理由は通用しないと考えられます。
参考:裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan