加賀の宿泊(のとや・葉渡莉・TAKIGAHARA FARM)
加賀温泉郷とは、粟津(あわづ)、片山津、山代、山中の4つの温泉の総称です。
今回の旅では、粟津と山代の2つの温泉に泊まりました。
「加賀の温泉はかなりレベルが高いぞ!」そう感じました。
中でも朝食がすごい。温泉旅館の印象って朝食で左右されることってありませんか?
正直、お風呂や夕食がどんなに豪華であっても、朝食がしょぼいといい印象は残りません。今回の2つの宿はどちらも朝食のレベルがとても高かったです。(もちろんそれ以外も)
粟津温泉:のとや
粟津(あわづ)温泉はあまりメジャーでありませんが、近場(金沢など)から泊まりに訪れるお客さんが多い(宿泊客の約60%)のだそうです。賑やかな温泉街というよりは、しっとりと落ちついて、雰囲気漂う静かな温泉地です。
のとやは創業700年、鎌倉時代頃から続く歴史あるお宿で、リピーターのお客さんが多いことで知られています。
コンセプトは「昔ながらの温泉旅館のわくわくがある」宿。
のとやの印象を挙げてみると、
- 館内にはジャズが流れていてセンスの良さを感じさせる
- 館内の温泉通りは「芸術の森」をイメージ
- 館内の通路は広く、ゆったりしている
- 館内のあちこちに生花が飾られている
- 館内のカラーは暖色系で落ちついた印象
などですが、それ以上に、のとやの魅力を表しているのが「接待さん」の存在です。
一組のお客さんに一人の専属接待さんがつく。
宿入りから出立までその接待さんがすべて切り盛りしてくれます。
毎年泊まりに来るお客さんは接待さんとも顔なじみになって「やぁ、今年もよろしく!」なんて関係になることも多いのだとか。
お客さんと宿の距離感が近い、温かさ、心地よさ。以前はあちこちの旅館に見られたこの距離感も、効率化、人件費削減の波で、続けられる旅館はほとんどなくなってしまったそうです。
温かく、落ちつける心地よい宿。毎年訪れるリピーター客が多いのも、うなづけます。

【粟津温泉 のとや】
- 住所:石川県小松市粟津町ワ85
- 電話: 0761-65-1711 (代)
山代温泉:葉渡莉(はとり)
山城温泉の中心にある古総湯(共同浴場)から歩いてすぐの場所、温泉街の賑わいの中に建っている温泉旅館「葉渡莉」。
葉渡莉という名は服部(はっとり)神社から来たと言われており、コンセプトは「木のぬくもり 葉の優しさ」。
館内は木と葉の温かく優しい色、ムードに包まれています。
毎夜、館内で演じられる「一向一揆太鼓」は迫力満点です。子供は泣いちゃうかも・・・(無料)

【葉渡莉】
- 住所:石川県加賀市山代温泉温泉通り17
- 電話:0761-77-8200
TAKIGAHARA FARM CRAFT & STAY
上記二つの温泉旅館とはまったく異なるタイプの宿泊施設がこちらです。
築100年の古民家をホステルに改装した新しいタイプの宿泊施設。
「こういうの、なんかいいよね。。。」初めてここを見た時の感想です。
サロンには有名デザイナーのソファやテーブルがさりげなく置いてあります。夜は土蔵を改装したBARでナチュラルワインや加賀のお酒を楽しめる、BARの階にはレコードルームがあり、音楽に包まれた時に身を浸らせることができます。
「デザイナーのセンスが光るような宿なら、きっとお高いんじゃないの?」
いえいえ、男女共用のバンクベッドルームでは一人一泊5,500円(朝食付き)から泊まることができます。(個室もあり)ただ、お風呂は温泉ではありません。(ホステルのバンクベッドルームはバスタブはなくシャワーのみ。石蔵を改装した一棟貸しのTAKIGAHARA HOUSEは石風呂あり。)
これまでの宿泊の常識が、根こそぎもってかれたようです。こんな山奥の農村にこれほど洗練された空間があるなんて。デザイナーが考えた、といっても決して奇抜ではなくこの地に溶け込んでいます。ヤギや鶏なども飼われているんですよ。新しいスタイルの農家です。※オーナーはIDEE創始者の黒崎輝男さん。
黒崎さん曰く「滝ヶ原に集まるのは落ちこぼれ、社会に適合できない人」だそう。器用に世の中を泳いでゆくことは苦手だけれども、人と違うことを発見したり、気づいたり、発信したり、作ったりできる。人と違うことが尊重される、ここは、そんな心地よい空間なのかもしれません。外国人にも人気だそうです。イタリアのおしゃれなアグリツーリズモにも似ているように感じました。
好みは分かれるでしょうが、ホステルなので共用スペースが多くて、ゲスト同士が仲良くなりやすい雰囲気です。ふらりと訪れて、そのまま居ついてしまう人、スタッフになってしまう人もいるらしいです。
「こういうところに泊まるスタイルも、これから主流になっていくのかも。。。」そう思いました。

今までにあまりないスタイルの宿なので、実際に行ってみないと魅力が伝わらないと思います。ぜひ一度自分の目で見て感じてください。

隣接のカフェ。農村にあるとは思えないセンスの良さです。
【TAKIGAHARA FARM CRAFT & STAY】
- 住所:石川県小松市滝ヶ原町923-0335
- 電話:0761-46-5621
次は加賀のモノづくりの世界をのぞいてみましょう。
加賀のモノづくり(水引アクセサリー・石切り・献上加賀棒茶・九谷焼)
北陸は全般にそういう潮流がありますが、ここ加賀もモノづくりが盛んな土地です。匠が脈々と繋いできた、職人の歴史が息づいています。
水引アクセサリー:かねこ結納品店
水引というと、祝儀袋や、結納品に装飾として付いているというイメージではないでしょうか? 古来から続く形式的なもので、その場面だけ使って終わり、それ以外はお世話になることはない、というか。

かねこ結納品店も、元々は伝統的な水引を作っていましたが、最近は水引を使ったアクセサリーなどの作品も作っておられ、女性の間で人気だそうです。

水引の素材は「紙」です。和紙をこより状に長く延ばし、絹糸を巻き付けたものです。デザインによっては表面をコーティングしたりもします。
水引の特徴は軽いこと、強度もかなりあるので、意外に長持ちします。弱点は紙ですから水に弱いこと。
かねこさんは言います。
「思い出の結納の水引飾りは押し入れの中で眠らせたままにしないで、日常のインテリアとして外に出してみてはいかがでしょうか。お部屋が明るくなりますよ。羽子板飾りにリメイクすることもおすすめです。」
かねこ結納品店のイヤリング&ピアス、ネックレス、髪飾り、水引アロマディフューザーなど、すべてデザインから制作まで一貫して職人が手掛けている品です。
「水引アクセサリーも記念のお土産ではなく、日常的に使ってほしいですね。」
水引は一度結ぶと外れないことから、ご縁を結ぶ・運気上昇など縁起の良い意味がたくさんあるもので、コロナ禍で更に人気が出たそうです。なるほど、水引アクセサリー、これからもっと注目されそうですね。
【かねこ結納品店】
- 住所:石川県野々市市本町2丁目13-5
- 電話:076-248-0222
滝ヶ原石 本山石切場 石材荒谷商店
小松市には石切り場が多いそうです。太古の時代にこの辺りは火山が噴火し、火山灰が体積した石(凝灰岩)でできた山が多いからだそうです。
この地で採られる「滝ヶ原石」は白色で表面はざらざらしていて柔らかく、加工しやすいのが特徴です。
石材荒谷商店は、大きな石切り場を、5代目社長と職人のたった二人でやっています。4代目社長だった現社長のおじいちゃんは1年365日中なんと362日石切り場の中にいて働いていたそう。好きでないと出来ない仕事です。
石切り場の中に入ると太陽光が差し込まないので、今何時か忘れてしまうこともしばしば。私ならとても耐えられません。
石を切り出すという仕事は、時間と手間がかかり(機械化もされているが今も多くが手作業)、岩盤崩落など命の危険にさらされることもあります。石材荒谷商店のような人たちによって繋いでこられたんだな、と感慨深くお話を聴きました。


【本山石切り場 石材荒谷商店】
- 住所:石川県小松市滝ケ原町二の143番地
- 電話:0761-65-2378
献上加賀棒茶:丸八製茶場 実生(みしょう)
献上加賀棒茶とは、一番茶の"茎"を焙煎して作られたほうじ茶です。
昭和58年、昭和天皇が植樹祭で石川県を訪れた際、ほうじ茶を献上したことをきっかけに、丸八製茶場は価格競争一辺倒だったほうじ茶作りをがらっと変えました。
そこからが苦難の始まり。質は高いが値段も高い加賀棒茶はまったく売れませんでした。「まともじゃないんじゃないの」と周りから言われ、職人も離れていき、会社存続の危機にさらされながらも社長がやり続けたこととはなんだったのか・・・
詳しくは、ぜひこちらの記事『ほうじ茶の常識を変えた「丸八製茶場」の物語』をご覧ください。

【丸八製茶場 実生】
- 住所:石川県加賀市動橋町タ1番地8
- 電話:0120-42-4251(フリーダイヤル)、0761-74-2425
九谷焼
加賀といえば、九谷焼と言われるほど、有名な磁器。色鮮やかな絵付けが特徴です。
九谷焼は江戸時代前期、大聖寺藩(現加賀市)の九谷村で生まれ、約50年後にいったん廃窯する(原因や詳細は不明)も江戸時代後期に復活し、明治時代には、外国でも大人気となりました。
「九谷焼とは?」と問われても答えは難しく、鮮やかな色絵付けが特徴と言われても、それだけで九谷焼のすべてを言い表したことにはなりません。
実は、九谷焼の定義は広い。九谷焼と名乗って良い条件は以下の2つです。
- 九谷の土地で造られたもの
- 九谷の陶土(花咲陶石)を使ったもの
縛りが厳しくないので、デザインも色使いも作家の感性によって大きく違います。昔の九谷焼と現代の九谷焼をみてまったく別のものに見えることも珍しくありません。
それだけ九谷焼は懐が深いと言えます。九谷陶芸村には、陶芸館と資料館、美術館、ショップ10店舗が連なるショッピングモールがあり、過去から脈々と続く九谷焼の姿を見ることができます。

【九谷陶芸村】
- 住所:石川県能美市泉台町南22