この数年でメンズフィジーク部門の人気は瞬く間に上昇し、大勢のトレーニーたちがコンテストに出場するようになった。脚の発達に関して言うなら、確かにフィジーク部門の選手たちは、ステージ上で大腿部を覆い隠すボードショーツを着用して順位を競っている。そのため、脚の発達は不要だと考える人がいても仕方ないだろう。しかし、見えないから発達させる必要はないという考え方は、やはり正しいとは言えない。それに気づいた選手たちは、脚のワークアウトは必要であると考え直し、トレーニングスケジュールに脚のワークアウトもしっかり組み込むようになってきたのである。
文:William Litz 翻訳:ゴンズプロダクション
全身のバランスを整えるために
メンズフィジークでも脚の発達が求められる理由は、まず第一に上半身とのバランスを整えるためだ。もし本当に「脚を発達させなくてもいい部門」だとすれば、全身のバランスは評価対象にならないはずだ。しかし、メンズフィジークではバランス、シンメトリー、シルエットが徹底的に審査される。理想的な全身バランスをつくり上げることは必須であり、そのためには上半身と同じくらい下半身も発達させ、全体のバランスを整えなければならないのだ。
スクワットで腕も太くなる?
私がトレーニングを始めたのは1980年代後半になってからだが、そのときに得たアドバイスは、今でも強烈に記憶に残っている。それは「腕を太くしたいなら徹底的にスクワットをやり込め」というものだ。
なぜ腕の筋量アップにスクワットが関係するのか。それは、スクワットが体内のテストステロンや成長ホルモンの分泌を促すからだ。体内でこれらのアナボリックなホルモンのレベルが高まれば、全身の筋発達に影響する。もちろん、腕も例外ではないのである。 実際のところ、人気のあるトレーニングプログラムを見てみると、スクワットは必ずと言っていいほど含まれている。高重量×低レップで行うことが推奨されている場合もあるが、高頻度で行ったり、あるいはハイレップで行うことが勧められている場合も多い。
スクワットは、一般的には脚の種目という認識だが、実際は全身を刺激する種目であり、スクワットを主体にしたワークアウトの例は無数に存在する。その場合、ベンチプレス、チンニング、オーバーヘッドプレス、バーベルカールなどが補助的な種目としてワークアウトに組み込まれるが、メインとなる種目はスクワットなのである。
仮に上腕二頭筋のサイズが倍になったとしても、身体全体から見れば実際に増えた筋量はそれほど多くはない。しかし、もし大腿部の筋肉が倍になったら、すさまじい量の筋肉が増えたことになる。その場合、大腿部だけが太くなるのではなく、全身の筋量が確実に増加することになるのだ。
身体の中で下半身や背中の筋肉は面積も体積も大きい。これらの部位を重点的に発達させていくと、他の部位にも明らかな発達が見られるのだ。
脚のトレーニングは全身の発達をもたらす。だからこそ、メンズフィジークでも脚のワークアウトは不可欠なのだ。ただ、その目的は脚を肥大させることではない。全身をより良く形づくり、バランスを整えるためだと覚えておいてほしい。