アナボリックホルモンの低下
人間には様々な機能が備わっているが、残念ながら加齢によって低下していくのが自然の摂理だ。当然、タンパク同化作用をもたらすテストステロンや成長ホルモンなど、わたしたちがアナボリックホルモンと呼んでいるものも分泌量が減っていく。テストステロンに関して言うと、30歳を過ぎた頃から年に1~3%の割合で分泌量が減少していき、平均すると10年ごとに14%も減ることが多くの研究で示されているのだそうだ。テストステロンの分泌量については、睡眠に大きく左右されるという実験結果がある。たとえば被験者の1日の睡眠時間を8時間から5時間に減らした実験では、わずか1週間でテストステロンのレベルが10~15%も減少したそうだ。
この実験結果を参考にするなら、テストステロンを減らさないようにするために、まずは8時間の睡眠を得られるように1日のスケジュールを調整し、眠るための環境を整えたい。言い換えれば、しっかり眠ることさえできれば、少なくともテストステロンの分泌量を減らす要素をひとつ解決できたということになる。
散々言われてきたことだが、ストレスを減らすことで、ストレスホルモンのコルチゾールを抑制することになる。コルチゾールはストレスホルモンとして知られているが、筋肉の分解を促す異化分解ホルモンでもあるのだ。異化分解ホルモンなので、同化ホルモンのテストステロンとは拮抗する。つまり、コルチゾールが高まればテストステロンは低下する。逆に、テストステロンが高まればコルチゾールは抑制される。そのため、できるだけコルチゾールを抑えた状態で日々を過ごしたいので、可能な限りストレスの少ない日常を過ごしたい。
仕事、家族、学校など、ストレスの原因は人によって様々だ。トレーニングですら身体に負担をかけるためストレスになる。といって、肉体改造を望むならトレーニングをしないわけにはいかない。そこで、トレーニング時間以外はできるだけストレスを抑え、食事についても気を配るようにしたい。例えば、飽和脂肪酸を多く含む食材を積極的に食べるようにしてほしい。
飽和脂肪酸?と思うかもしれないが、ホルモンは体内でコレステロールを原料にして作り出されていて、コレステロールの元になっているのは飽和脂肪酸なのだ。複数の研究で、飽和脂肪酸を多く含み、なおかつ食物繊維が少ない食事は、テストステロンの生成量を増加させるという実験結果が得られている。
もちろん、ここでいう飽和脂肪酸の食材については天然のものがよく、たとえば乳製品や赤身の肉、ココナッツオイルなどを積極的に食べるようにするといいだろう。また、亜鉛を高含有する食材にも目を向けてほしい。たとえば放牧で育てられた牛の肉、ヨーグルト、羊、カボチャの種、カシューナッツ、牡蠣、ひよこ豆には亜鉛が多く含まれている。これらの食材を使った料理は、成熟した筋肉作りに大いに役立つはずだ。
運動の種類に関して言うなら、有酸素運動を高強度と低強度で交互に繰り返すHIIT(ハイインテンシティ・インターバル・トレーニング)や、血流を制限するトレーニングなどが勧められる。これらのテクニックを用いた運動は関節への負担が軽く、ケガのリスクが少ないと考えられる。
慢性的な筋肉の炎症
年を重ねると、身体のあちらこちらに弱い炎症が起き、それが続くようになる。このような慢性的な炎症は筋肉にも起きるので、筋量減少や筋力低下につながってしまう。このような炎症の原因は運動だけでなく、インスリン耐性の増加や糖尿病、肥満などにもあり、できるだけこれらの病気や不具合を起こさないようにしたいところだ。
食パン、パスタ、菓子パンなど、精製された炭水化物から作られたものは極力避けるようにしたい。揚げものや糖分が多い飲料、そのほか多くの加工食品もできるだけ避けたほうがいいだろう。以下の食材は、炎症を予防したり、あるいは緩和したりしてくれるので積極的に食べるようにするといいだろう。
●緑色野菜(ホウレンソウやケールなど)
●ナッツ類(アーモンドやクルミ)
●脂の乗った魚(サーモン、サバ、ツナ、イワシなど)
●果物(イチゴ、ブルーベリー、サクランボ、オレンジなど)