目次
不動産投資で節税に向いている人・物件
不動産投資で節税できる仕組み
不動産投資で節税に向いている人・物件
不動産投資で節税に向いている人や物件の特徴は以下のとおりです。
節税に向いている人
・課税所得900万円以上(所得税率が33%~45%)、目安は額面年収1200万円超の高額所得者で、特に給与所得が高い人
・相続財産がある人で、特に現金の相続資産を多く保有している人
不動産投資で節税効果を期待できるのは、個人の所得税・住民税と相続税・贈与税です。そのため高額所得者で所得税率が高い人は、課税所得圧縮による節税効果を得やすいでしょう。
また相続資産を多く保有しており相続税・贈与税が心配な人も、不動産を活用した節税対策が可能です。
節税に向いている物件
・短期間で大きな減価償却費を取りやすい中古物件
物件にも節税の向き・不向きがあります。
より具体的にいうと、「耐用年数が短い木造物件」か「軽量鉄骨造の中古一棟アパート・マンション」が節税に向いています。
先述したとおり、減価償却費を取りやすいということは、課税所得を圧縮して全体の税金を軽減できるからです。
ただし不動産投資のメリットは、節税だけではありません。
不動産投資の魅力は、為替相場や株式市場の影響を受けにくく激しい値動きにさらされることが少ないため、長期的に家賃収入を得やすい点にあります。
高額所得者は別として、節税効果はあくまで不動産投資に付随するメリットと考えるようにしましょう。
不動産投資で節税できる仕組み
ここでは個人・法人それぞれの節税効果について、具体的な仕組みを深掘りして解説していきます。
個人の所得税・住民税
不動産投資で個人の所得税・住民税を軽減できるのは、減価償却により課税所得を圧縮できるからとお伝えしてきました。
とはいえ、減価償却によって物件保有中の課税所得を抑えられても、物件売却時には減価償却した分、譲渡所得が大きくなります。
譲渡所得には別途所得税・住民税が課せられるため、結局売却してしまえば別の税金が発生してしまうのです。これでは節税ではなく、単純に税金を繰り延べているだけにすぎません。
しかし譲渡所得の場合、物件の保有期間が5年以上であれば税率は約20%です。
普段の給与所得にかかる所得税・住民税率が合計43%あるとすれば、物件保有時の所得税を繰り延べし、物件売却時の譲渡所得税率約20%で課税された方がお得になるというわけです。
課税所得が900万円以上ある人の所得税率は33%、約10%の住民税とあわせると税金の負担は約43%となります。
物件保有中は減価償却によって所得への課税をできる限り抑えれば、物件売却時には実際の所得税率より低い譲渡所得税率で課税することができます。
このように税率の差異を利用して合法的に節税できる人のラインが、課税所得900万円以上なのです。
個人の相続税・贈与税
不動産投資は所得税・住民税だけではなく、相続税や贈与税対策にも有効です。
相続税は土地や建物を実売価格より安く評価する仕組みがあります。
そのため預貯金など現金での相続資産が多い人は、現金の一部を土地や建物に変えれば、相続税の評価額を下げることが可能です。
すでに土地を所有している場合は、所有土地に賃貸物件を建て、相続税の評価額を下げるという手法もあります。
相続税は2015年の税制改正で大きく増税されたため、相続資産が大きい人によっては所得税・住民税以上の節税効果を期待できるでしょう。
また、贈与税には「相続時精算課税制度」という制度があります。
これは、贈与時の贈与税額を抑える代わりに、相続のときには「贈与した財産を足し戻して」相続税を計算するというもので60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子・孫への贈与に対して適用することができます。
相続時精算課税制度を使った贈与の場合、2500万円までは贈与税がかからず、2500万円を超えたとしても税率は20%です。
また、1000万円のマンションを贈与する場合も、相続時精算課税制度を使えば贈与税がかかりません。
贈与者が死亡したとき、この1000万円も加えて相続税を計算することになりますが、相続税の基礎控除は比較的額が大きいので、相続税がかからないこともよくあります。
ただし、相続時精算課税制度を利用すると、暦年贈与が使えなくなり、年間110万円以下の少額贈与でも申告が必要になるほか、小規模宅地等の特例が使えなくなるといったデメリットもありますので利用する前にこれらを確認しましょう。
法人税・事業税・法人住民税
法人にかかる法人税・事業税・法人住民税も節税できます。
法人の場合、節税というよりタックスマネジメントという方が適切でしょう。
減価償却の計上によってその年の課税所得を圧縮し、法人税・事業税・法人住民税を軽減できます。
ただ先述したように、物件を売却すれば譲渡所得に課税されるため、「税金を繰り延べるだけでは節税にならない」と思うかもしれません。
しかし法人の場合、実際のお金の流れと違う流れを会計上で作れるのは、事業経営において非常に有利なタックスマネジメントです。
事業計画との兼ね合いで課税時期をうまくコントロールできれば、本業の収益が悪化したときでも不動産投資の課税コントロールでカバーしやすくなります。
事業の安定化をはかりたい法人には、タックスマネジメントによる節税対策もあります。