目次
熟成酒の旨さとは
菊姫の酒を飲み比べ

熟成酒の旨さとは

何度も言いますが、最近の日本酒の流行りは「甘口フルーティー系」です。香り華やか、やや甘めで飲みやすく、いわゆる日本酒らしさがあまり感じられない、白ワインのような飲み口です。

ひと口飲むと「えっ これが日本酒?」と言われることもあり、日本酒が苦手な人もこれで日本酒ファンになった方もいらっしゃると思います。私も決して嫌いではありません。飲むことも多いです。ただこういうお酒はせいぜい飲んで1~2杯までかな、と私は感じています。飲み続けると飽きてくるのです。

日本酒はそもそも食中酒です。料理に寄り添い、料理を引き立て、食事を美味しくいただく、そのための伴走者が日本酒だと思います。(個人の考えです)

香りが強めのフルーティーな酒は、料理とけんかしてしまうのです。お互いを引き立てあうのではなく主張が強すぎる。ですから私は香りが強い酒は食中酒としては合わないように思います。

「熟成酒はどっしりしてて重く濃い酒なら、主張が強すぎるんじゃないの?」「余計に料理のじゃまをするんじゃないの?」と感じられたかもしれません。

はい、私が菊姫を飲んで「えっ!」と感じたのは、これまで私が感じていた熟成酒に対する誤解からでした。

菊姫の熟成酒を飲んで驚いたのは、「角が取れて丸くなり、おだやかでまろやかな優しい酒だった」からです。

口に含むと身体のすみずみまで日本酒の旨さがじんわりと染みとおっていくような感覚です。身体に溶け込んでいく。

これが私が「!!!」と感じた正体です。

今流行りの酒造りには目もくれず、ホンモノの日本酒を造り続ける骨太の酒蔵。

菊姫のお酒は透明ではありません。やや黄色味がかっています。これを見ると「古酒っぽいな~」と感じてしまうのですが、そもそも日本酒というのは、色がついているものだそうです。それを活性炭などで濾すことにより、色を透明にする蔵が多いのだそうです。ろ過することによって透明にはなるけれども、酒の旨みも一緒に濾されてしまう。だから菊姫は、色を透明にするためのろ過はしません。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

菊姫 山廃純米の色です。これが菊姫の特徴でもあります。

菊姫の酒を飲み比べ

では、いよいよ菊姫のお酒をいくつか紹介しましょう。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

<蔵の売店で売っているラインナップ>

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

「お買い上げは現金で」というホーローの看板がレトロでいい感じです。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

<鶴乃里 4合瓶(720ml)2,200円(税込)>

今回、蔵の売店で買うのなら、とおすすめされたのがこの鶴乃里です。IWC(インターナショナルワインチャレンジ)2007年に初代チャンピオンサケを受賞。山廃の力強さと熟成のまろやかさ、きめ細かさが合体したレベルの高いお酒です。角がとれて丸くこなれた優しい味です。

この後は、東京に戻り、酒屋やスーパーをあちこち探し回って買って飲んだお酒をどどーんとご紹介しましょう。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

左から特撰純米、山廃純米、金劔純米、菊、姫の面々。いや~飲みました~。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

<特撰 純米 3,300円(税込)1,800ml>※写真は4合瓶720ml

濃厚で柔らかい米の旨みがたっぷり味わえる。まろやかで旨みのある深い味。しっかりした造りを感じます。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

<菊姫 山廃純米 3,080円(税込)1,800ml>

これぞ「ザ・菊姫」の代名詞のような酒です。山廃らしいガツーンと来る酸の強さと濃醇な深み。菊姫では「男酒」と言われます。

これは日本酒好きの中でも好き嫌いが分かれるほどはっきりした酒で、いきなりこれを飲むのはやめた方がいいかも。もしかすると菊姫を嫌いになるかもしれません。ただ、日本酒が本当に好きな方はこの山廃純米を好まれるそうです。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

<山廃で作られた酒母>

「山廃」とは酒母の作り方昔ながらの酒造り法で、今主流の安定して効率的に速く造る「速醸」に比べ安定せず、造るのがとても難しいと言われています。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

<金劔 純米 3,080円(税込)1800ml>

お米の柔らかさが生きた、やや甘めのお酒です。菊姫の中では「女酒」と言われています。男酒の山廃純米と対照的。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

<普通酒 菊 2,200円(税込) 1800ml>

日常的にリーズナブルに味わえる普通酒でも菊姫は手を抜きません。こういうところに酒蔵の姿勢が出ます。「菊」もしっかり熟成させてから世に出します。「冷や良し、燗良し、燗冷(かんざ)良し」普通酒であっても菊姫堂々のクリーンナップです。

【菊姫】流行りの酒には目もくれず、本物の日本酒を造り続ける骨太の酒蔵
(画像=『たびこふれ』より引用)

<普通酒 姫 1,870円(税込)1800ml>

こちらが普通酒「姫」。毎日の晩酌にぴったりのマイルドで飲み飽きしないお酒。菊姫の中ではさっぱり系。誤解を恐れず言えば、上質の出汁のようにも感じられます。

いきなり「山廃純米」から入ると菊姫を嫌いになってしまうかもしれない(笑)ので、まずはこの「姫」から入るのが良いでしょう。しっかりした酒造りをしている菊姫の良さがよくわかることでしょう。

値段もとてもお手頃。これだけきちんと造っているのに,、一升で1,870円とはコスパ良すぎです。私も晩酌の定番酒にします!