航空会社トップが不安視する「飛行機を飛ばせないリスク」、SAFとは?
人件費を抑えれば航空会社の先行きは明るいのか。直近の原油高と出遅れたSAF対策にも目を向ける必要がある。
原油価格と航空会社の業績は密接に関わっており、原油価格が高騰すると渡航コストが増大するため業績は悪化する。原油高は原油産出国の増産への消極化や、米国・インドなどの原油消費大国の需要増が影響している。
原油価格を大きく左右するOPECプラスは、需要に応えるより原油価格の安定を望んでいる。海外では渡航需要が回復しつつある中、供給量が変わらないようであれば、原油価格は高値に落ち着くであろう。
また、日本政府のSAFに対する取り組みの遅れも長期的にはネガティブだ。SAFとはSustainable Aviation Fuelの略であり、持続可能な航空燃料を指す。環境への意識が高まる中でSAFの使用を義務化する国もあらわれている。
SAFは世界的な需要量に対して生産が追いついておらず、各国で争奪している状態が続く中、JALとANAは2030年には燃料の10%をSAFにする目標を立てた。しかし実際にはまだまだ道半ばであり飛行機を飛ばせないリスクすら懸念されている。
JALとANAの両代表は今年11月、SAF確保の取り組みが大幅に遅れているとして異例のトップ共同インタビューをNHKから受けた。その際には航空業界と日本政府が一体となってSAFの生産体制整備や調達計画を進めていく必要性を強調した。SAFはライバル会社が手を取り合うほど深刻なリスクとなっている。
日本だけ出遅れる景気回復
コロナ禍による打撃で、航空会社各社は政府の姿勢がいかに業績に影響するかを痛感したはずだ。
政府が渡航制限を本格解除しないことには航空需要は立ち直らない。コロナウイルスを軽視することはできないが、2021年7-9月期の実質GDPはアメリカ、ユーロ、日本で、日本だけが前期比マイナスと落ち込んでおり、回復の出遅れは明らかだ。
SAFの調達にしても、民間企業だけの連携では限界はある。欧州諸国の事例を見習い、官民一体となってSAF問題に取り組むべきである。
JALとANAは、社内のリソース活用政策に取り組むと同時に、政府との連携も積極化する必要があるだろう。
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牧野 章吾 株式会社LIONEL代表取締役
文・シェアーズカフェ・オンライン/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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