目次
不動産投資の繰上返済の注意点
・繰上返済を行う窓口により最少額が異なる
・繰上返済手数料が発生するケースがある
・確定申告の額が変わる
・不測の事態に備え修繕費は計算しておく
・繰上返済の目的をはっきりさせる
不動産投資の繰上返済はすべきか?
・手持ち資金が十分な場合、繰上返済を検討してみる
・繰上返済を行うタイミング
・繰上返済によって心理的にラクになるならアリ
不動産投資の繰上返済は綿密なシミュレーションを
不動産投資の繰上返済の注意点
金融機関によって異なりますが、繰上返済は、自分の好きなタイミングで行えます。ただし、繰上返済をするときの「最低額(最低金額)」が、返済方法によって異なる場合があるので注意が必要です。例えば、以下のようなケースがあります。
- 期間短縮型の場合は、1カ月分の返済元金の額以上であれば可能
- 返済額軽減型(期間据置)の場合は、1円から可能
このように、繰上返済が可能な最少額は返済方法によって異なり、ボーナス返済の有無によって繰上返済額の計算が変わることがあります。また、金融機関ごとに繰上返済の最低額(最低金額)が異なる場合や手数料がかかる場合もあるため注意が必要です。
繰上返済を行う窓口により最少額が異なる
繰上返済の最少額は、金融機関ごとに異なるだけではなく、返済を行う窓口に応じて変わる場合もあります。例としては、以下のようなケースです。
- 金融機関の窓口で直接申し込む場合は、最少額100万円以上
- インターネット窓口で申し込む場合は、最少額10万円以上
繰上返済は、申込先窓口の違いによっても最少額が異なるので、計画的な返済を行うためにも事前に確認しておくことが大切です。
なお、繰上返済を行う際の注意点はほかにもいくつかあるので、以下で解説していきます。
繰上返済手数料が発生するケースがある
繰上返済時には一定の手数料が発生するため、少額ずつ頻繁に繰上返済をすると、それだけ支払手数料が増えて無駄な支出になってしまう、といった場合があります。また、手数料の額は金融機関によって異なりますが、最低額は10,000円(変動金利型の場合)からで、残りの元金に応じて手数料率1~2%程度を乗じて算出する、といったケースもあります。
繰上返済をするごとに手数料がかかってしまう場合は、少額をこまめに返済していくよりも、例えば100万円単位など、まとめて行ったほうが効率良く返済できます。
確定申告の額が変わる
不動産投資を始めると、年度末に確定申告をします。確定申告は、不動産投資で利益が出ているときは税務申告が必須ですし、赤字の場合でも所得税の還付が受けられる場合があります。
ローンの繰上返済は、こうした不動産所得の確定申告にも影響があります。それは、繰上返済を行うことでローンの支払利息が減るからです。例えば、ローン返済額に含まれている利息分は、不動産投資の「経費」として計上することができますが、繰上返済によってローン返済の総支払額が減るため、利息も減るというわけです。
不測の事態に備え修繕費は計算しておく
繰上返済をするということは、「その分のキャッシュ(現金)が減る」ということでもあります。不動産投資は、何かあればその都度さまざまな支出が発生しますが、その中でも建物の修繕費用は大きな出費になりがちです。
例えば、一棟賃貸マンションの運用をしているときに、災害によって建物の外壁にクラック(ひび割れ)が入ってしまい、補修が必要になった場合。補修内容によっては、多額の修繕費がかかってしまうケースもあります。そのときに、もし繰上返済をしたばかりでキャッシュが残っていなかったら、外壁の補修ができなくなる可能性もあり得ます。そうならないためにも、あらかじめ修繕費用は積み立てておいたほうが安心です。
投資用の賃貸マンションを運用する場合は、将来的な大規模修繕を含んだ修繕積立金を計画しています。もし建物管理を管理会社に任せず自主管理するという場合でも、修繕積立金はからきちんと検討しておいたほうがよいです。
繰上返済の目的をはっきりさせる
例えば、ローンを利用した不動産投資では、物件価格に対して自己資金が足りない場合でも購入できるのが大きなメリットです。いわゆる「レバレッジ効果(少ない自己資本で多くの利益を上げられること)」の期待が最大の魅力ですが、繰上返済をしすぎるとそれだけ自分の資金を投入することになるため、自己資本率が高まる結果にもつながります。
例えば、「定年までにローンを完済したい」「変動金利が上昇する前に、完済時期を早めたい」といった、ご自身の目的に合わせて繰上返済を行うのがよいでしょう。
他人のお金で収益物件を買って利益を上げているのに、繰上返済をすると自分のお金を使っていることになり、レバレッジ効果は減少していきます。
不動産投資の繰上返済はすべきか?
ここまでの内容を踏まえたうえで、不動産投資では繰上返済をやった方が良いのでしょうか。やるべきか否かをどう判断するのか、そのポイントを紹介します。
手持ち資金が十分な場合、繰上返済を検討してみる
不動産投資のリスクを考えたうえでも十分に資金があり、その資金を他の投資に回すよりも繰上返済に利用した方がトータルで効果があると判断するなら、繰上返済をするのはよいでしょう。
資金が足りているか分からない場合は、これまで払った支出や、今後発生する費用を計算してみましょう。現在のキャッシュフローと照らし合わせ、どの程度資金に余裕があるかを整理します。その結果不安があるなら、無理に繰上返済を行う必要はありません。
繰上返済を行うタイミング
繰上返済をする場合、どのタイミングで行うべきでしょうか。基本的にローンの繰上返済で効果が出やすいのは、返済開始からあまり期間が経っておらず、繰上金額が大きい場合です。つまり、なるべく早期で、多額の繰上返済が可能なタイミングがおすすめです。
より多額を繰上返済した方が得なのは分かりやすいと思いますが、早期の方が効果的だというのはどういうことでしょうか。
先ほどの例で考えてみましょう。3%の金利のローンを、借入れから5年後と10年後にそれぞれ同じ金額を繰上返済した場合、支払総額は以下のように変化します。
(1)5年後に200万円繰上返済をした場合
返済額軽減型 | 期間短縮型 | |
---|---|---|
毎月返済額 | 11万7,000円 | 12万7,000円 |
返済総額 (繰上なしの場合との差額) | 4,469万円 (-84万6000円) | 4,347万円 (-206万8000円) |
(2)10年後に200万円繰上返済をした場合
返済額軽減型 | 期間短縮型 | |
---|---|---|
毎月返済額 | 11万7,000円 | 12万7,000円 |
返済総額 (繰上なしの場合との差額) | 4,488万円 (-66万3000円) | 4,402万円 (-152万1000円) |
10年後に繰上返済を行った場合と比べて、5年後の方が利息の削減効果が高いのが分かると思います。
ただ、いくら早期の繰上返済が効果的といっても、焦って多額の資金を投入しては本末転倒です。「キャッシュに余裕がある場合に限定する」という基本を忘れないようにしてください。
繰上返済によって心理的にラクになるならアリ
不動産投資では、ローンの金額が一千万円単位になることもあります。多額の借金をかかえている状態は、大きな心理的負担を伴います。そのため、繰上返済で早くローンを完済し、心理的にラクにさせるのもひとつの方法です。
合理的な理由から繰上返済を検討するのも大切ですが、心理的な不安を払拭するという目的で繰上返済を考えるのも一案です。
不動産投資の繰上返済は綿密なシミュレーションを
繰上返済をするかどうかは、現在のキャッシュフローと手持ちの資金、今後発生する支出をシミュレーションして、なおかつ同じ金額を別の投資に回すことによるリターンとの比較もしたうえで総合的に判断します。ローンの利率や繰上返済のタイミング、支払う金額によっては思うように利息を削減できない可能性もあるので、そちらも合わせて考慮してみてください。
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。
提供元・RENOSYマガジン
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