「防災」で起業を決意するも、コロナで受注が白紙に

ありそうでなかった、「防災×ギフト」の組み合わせ。しかし、泉氏は「本当はカタログギフトをやる予定ではなかった」と苦笑する。

2020年9月に「KOKUA」を創業した泉氏だが、その原点は、1995年の阪神淡路大震災にある。生まれて間もない頃だったが、神戸市内にあった自宅も半壊の被害に遭った。

「当時、私は9か月だったので記憶はありませんが、震災の話を両親や兄から聞いて育ちました。そのこともあり、物心ついた頃から防災に対する関心を持っていました」

さらに大学に入学する直前の2011年3月には東日本大震災が起こり、学生時代は災害支援のボランティアで何度も東北の被災地を訪れた。そこで知り合ったメンバーがのちにKOKUAの創業メンバーとなる。大学を卒業後し、社会人になってからも有給休暇を活用しながら災害支援活動を継続していた泉氏。その傍ら、防災活動団体が主宰する防災特化型アクセラレーター(起業支援)プログラムに、ボランティア仲間とともに参加した。当時の起業アイデアは「企業向けの災害・防災研修サービス」だった。

「災害が起こっている状況というのは、実は究極の意思決定が求められる場でもあります。その意思決定のプロセスやチームビルディングの要素を盛り込んだ、独自の社員研修プログラムを開発しました」

「防災×ギフト」で人気「LIFEGIFT」 3.11を経験した若者が起こす「防災イノベーション」
(画像=常に明るくポジティブな表情を崩さない泉氏。、『DCSオンライン』より 引用)

この研修プログラムは反響を呼び、さまざまな企業から引き合いがあった。一定の需要があると見込んだ泉氏は2020年3月、勤めていた会社をおもいきって退職。起業家としての一歩を踏み出した。

ところが、そのタイミングで起こったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。商談を進めていた企業が次々に社員研修を見合わせ、受注が白紙になってしまった。

クラウドファンディングで目標額の2倍を調達!

これからという矢先、いきなりピンチに立たされた泉氏。その窮地で、「もともと構想を温めていた」という防災カタログギフトのアイデアにすぐアクションを切り替えた。

研修プログラムの受注をすべて失った数か月後の2020年7月には、クラウドファンディングサイトで防災カタログギフトのプロジェクトを掲載、支援を呼びかけた。すると、開始24時間後には目標額の150万円を達成。最終的には350万円を獲得するなど大きな反響を得た。

2020年12月、LIFEGIFTを正式に販売開始。当初は認知度が高まらず苦戦したが、すぐに追い風が吹く。NHKの朝と夕方のニュース番組でLIFEGIFTが採り上げられたのだ。

その直後、「このニュースを観た」と声をかけたのが、ホームセンター大手の東急ハンズ。全国約50店舗にポップアップショップを展開し、LIFEGIFTが大きく認知されるきっかけとなった。

その後も、SDGsの追い風にも乗って、LIFEGIFTはさまざまなメディアで紹介され、そのたびに認知度を高めていった。現在では月間で400冊前後を販売し、堅調に事業を伸ばしている。

「防災×ギフト」で人気「LIFEGIFT」 3.11を経験した若者が起こす「防災イノベーション」
(画像=よく出る商品のラインナップ。白い消火器は人気商品だそうだ。、『DCSオンライン』より 引用)